【東京都・創業助成事業】創業5年未満の法人又は個人、創業予定の方が活用できる事業拡大のための助成金!

こんにちは。高田馬場創業支援センターの岸です。

創業されて間もない、(1)これからやりたい新しい事業があるけれど、なかなか一歩を踏み出せない方(2)今取り組んでいる事業をもう一段階上のステージに引き上げていこうとお考えの方(3)取り組む(予定の)事業で従業員の雇用をお考えの方
今回はそのような皆さんにぴったりな東京都中小企業振興公社の創業助成事業のご紹介です。

例えば、ITの会社を経営されている方で、請負の仕事だけでなく自社サービスも出していこうと開発中の方から、これから飲食店を開業されたい方まで、様々な業種の方が申請することが可能です(※1)。会社や事業を大きくしていくことは、それを望んだとしても簡単にできることではない難しいことなんだなと、日頃仕事をしていて常々感じます。

また事業をはじめると激しい浮き沈みも多いことかと思います。そんな時に抱きがちな不安を少しでも軽減するためにも創業助成金を活用してみてはいかがでしょうか。
※1:ただし、都内で飲食店を開業する場合は、「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」や「商店街起業・承継支援事業」のほうが採択されやすいかもしれません。これらを下記の記事でご紹介していますので、ぜひ確認してみてくださいね(いずれも東京都内での事業が対象となります)。これらは採択予定数が少ないため、募集を終了している可能性もありますので、ご注意ください。

【若手・女性リーダー応援プログラム助成事業の記事はこちら】
店舗ビジネス@都内で創業したい女性と若者(39歳以下)が活用できる助成金!

【商店街起業・承継支援事業の記事はこちら】
【年齢性別不問】店舗ビジネス@都内で開業・事業承継する方が活用できる助成金!

【ご注意ください】
この記事は、東京都中小企業振興公社が実施する「創業助成事業」を分かりやすく説明する趣旨で作成したものです。本記事に記載されていない応募要件、注意事項など詳細な内容が「募集要項」には記載されています。申請などを検討される際には、必ず東京都中小企業振興公社が配布している「平成29年度 第2回創業助成事業【募集要項】」と「平成29年度第2回創業助成事業 Q&A」をご確認ください。
下記リンク先で配布されています。
「平成29年度 第2回創業助成事業」申請について

 

創業助成事業の募集要項

1 いくら、どのくらいの期間、助成されるの?

この助成金は、都内への創業を具体的に計画している個人、又は法人登記を行ってから5年未満の法人・個人事業の開業届出を行ってから5年未満の個人が、創業期に必要な経費(人件費、賃借料、広告費等)の一部について助成されるというものです。

・助成率:助成対象経費の3分の2以内
・限度額:300万円(下限額100万円)

また、助成期間は交付決定日(平成30年3月1日予定)から、1年以上2年以内となります。
国が実施している創業補助金は、助成期間が半年で最大200万円なので、この東京都の創業助成事業はとても使い勝手の良いものだと思います。

2 どういう人が申請できるのか、創業者等とは

この助成金を受けるにはいくつかの必要な要件があります。一つ一つ見ていきましょう。

これから創業を具体的に計画している、もしくは創業5年未満であること

先にもお伝えし通り、

・都内での創業を具体的に計画している個人
・法人登記して5年未満の中小企業者
・法人登記して5年未満のNPO法人(中小企業者の振興に資する事業を行うため、中小企業者と連携したり、中小企業者が 主体となって設立したりするもの)
・個人事業として開業の届出をしてから5年未満
*一般社団法人や個人開業医などは対象外です

であることが必要です。
申請時に個人(個人事業主)だった方が、その後、審査期間中に法人を設立した上で助成を受けたい場合は、平成30年1月末までに必要な書類を東京都中小企業振興公社に提出する必要があります(申請書の提出の際に、申請書に法人設立予定であることを記載する必要あり)。そのタイミングを逃すと、助成期間中に法人設立したら助成金を受け取れなくなるので、注意が必要です。

申請者は下記の①から⑬のいずれかの項目に該当する必要があります

申請書を提出する時点で、下記のいずれかに該当し、それを証明する書類の提出が必要となります。


①産業競争強化法(平成25年法律第98号)第2条第23項目に規定する認定特定創業支援事業により支援を受け、都内区市町村から証明を受けた者

これは、都内の市区町村が行うセミナーや創業塾、個別相談のことで、これらを受講した方が市区町村に申請すると「認定創業者」として証明されるというものです。

・新宿区の場合はこちら
・他の市区町村でも行っていますので、「(市区町村)認定特定創業支援事業」と検索してみてください。


②東京商工会議所、東京都信用保証協会、東京都商工会連合会又は中小企業大学校東京校BusiNestより認定特定創業支援事業に準ずる支援を受け、その証明を受けたもの。

それぞれの団体が実施する起業塾や創業スクール、セミナーなどを受講することを指します。どの起業塾や創業スクール、セミナーがそれに該当するのかについては、下記の機関に直接お問い合わせください。
東京商工会議所
東京都信用保証協会
中小企業大学校東京校BusiNest


③東京都又は東京都中小企業振興公社が設置した創業支援施設に入居している、又は以前に入居していた者

【東京都の施設】
東京都ライフサイエンスインキュベーションセンター、東京コンテンツインキュベーションセンター、青山創業促進センター

【東京都中小企業振興公社の施設】
ソーシャルインキュベーションオフィスSUMIDA、ベンチャーKANDA、タイム24、インキュベーションオフィスTAMA、白鬚西R&Dセンター


④東京都インキュベーション施設運営計画認定事業において認定を受けた施設に入居している又は以前に入居していた者(ただし、認定後に限る)

該当する施設は都内にかなりの数があるようです。一覧については、下記のリンク先をご確認ください。
東京都インキュベーション施設一覧


⑤独立行政法人中小企業基盤設備機構、区市町村、地方銀行、信用金庫、信用組合、国公立大学又は私立大が設置した創業支援施設と1年以上に賃貸借契約を締結して入居している又は過去3年期間以内に入居していた者

東京商工会議所のサイトに記載の創業支援施設であれば、それに該当する可能性は高いです。今、入居中の創業支援施設が一覧ない場合でもこの要件に該当する可能性がありますので、入居中の創業支援施設にお問い合わせください。

東京都内の創業支援施設(インキュベーションオフィス)一覧

なお、新宿区の施設である当センター、高田馬場創業支援センターもこの要件に該当します。

注意事項としては、1年以上の賃貸借契約が必要になりますので、利用しているからといって要件を満たす訳ではありません。当センターは半年間の利用承認となりますので、創業助成事業に申請するには、2度目の利用承認書が必要となります。過去の創業助成事業では、合計6名の利用者の方が採択されました。

高田馬場創業支援センターのシェアデスク


⑥青山創業促進センターにおけるアクセラレーションプログラムを受講している者又は以前に受講していた者

東京都からの委託を受け、有限責任監査法人トーマツが運営している青山創業促進センターにおけるアクセラレーションプログラムに採択された方のことになります。
青山スタートアップアクセラレーションセンター


⑦東京都が実施するTOKYO STARTUP GATEWAYについて、過去3か年の期間内においてセミファイナリストまで進んだもの

400字でエントリーできる、東京都が主催し、NPO法人ETIC.が運営事務局の若者向けスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」で、過去3か年の期間内においてセミファイナリストになった方のことになります。
TOKYO STARTUP GATEWAY


⑧東京都が実施する「女性・若者・シニア創業サポート事業」について、取扱金融機関から当該事業に係る融資を受け、その証明を受けた者

東京都が実施する創業時に活用できる融資制度「女性・若者・シニア創業サポート事業」で融資が実行された方のことになります。
女性・若者・シニア創業サポート事業


⑨東京都中小企業制度融資(創業融資)又は都内区市町村が実施する中小企業制度融資のうち創業者を対象とした東京信用保証協会の保証付き制度融資を利用している者

東京信用保証協会が保証をする制度融資で融資を受けた方のことになります(各自治体で制度が用意されています)。なお新宿区の場合は下記の融資制度が該当します。新宿区以外で事業を検討されている方は、「自治体名 創業融資」などで検索してみてください。
新宿区・創業支援融資制度~新宿区中小企業向け制度融資~
東京信用保証協会


⑩東京都が出資するベンチャー企業向けファンドから出資等を受けている者

下記のファンドから出資等を受けている方のことになります。
東京都ベンチャー企業成長支援ファンド


⑪政策金融機関の資本性劣後ローンを利用している者

日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)で資金調達された方のことになると思われます。

日本政策金融公庫・
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)


⑫公社が実施する、「TOKYO創業ステーションにおける事業計画策定支援」を終了し、その証明をうけたもの

TOKYO創業ステーションで実施されている「プランコンサルティング」を受けた方のことになります。
TOKYO創業ステーション プランコンサルティング


⑬公社が実施する、事業可能性評価事業において過去3ヶ月の期間内に「事業の可能性あり」と評価され、継続的支援を受けている者

下記の事業を受けている方のことになります。
事業可能性評価事業 ~ビジネスプラン評価・事業化支援~


これらの要件を1つでも満たしていれば、申請することが可能です。
注意点としては、要件の中には、今から申請受付期間である平成29年11月1日(水)〜9日(木)までに満たすことが難しいものもあります。来年度も公募が予定されていること、創業5年未満であれば申請できることなどより、まだ要件を満たしていない方は来年度の公募に向けて準備される選択肢もありかなと思います。

3 助成対象の経費はどんなものかあるの?

助成の対象となる経費は、

①人件費

②賃借料

③専門家謝礼

④広告費

⑤備品費

の5つの経費が対象となります。では、少し見ていきましょう。

①人件費

雇用の創出を伴う事業をお考えの方には、必須の経費だと思います。

ただし、この助成金は雇用調整のための助成金ではないため、人件費のみでの申請はできません。

また正規従業員に係る給与は月額35万円、パート・アルバイトに係る賃金は日額8,000円を限度としています。

例)月35万円×12か月=420万円

420万円から2/3なので、最大で280万円が助成されるということになります。

また、人件費の助成金を受け取る際の実績報告の確認書類(書類証拠)は

・就業規則(該当事業所のみ)
・賃金台帳
・出勤簿
・振込控
・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)

などが必要で、他の経費と比べると必要な確認書類が多いので、少し大変かもしれません。

②賃借料

こちらは、新規で事務所を借りる場合の家賃はもちろん、既に借りている事務所の家賃も助成対象になります(交付決定日以降の家賃が対象です)。

ただし、都内での物件であることが必須です。

備品のレンタル料・リース料、サーバーレンタルなども賃借料に含まれます。

③専門家謝金

事業立ち上げの際に必要なアドバイス(助言)を受けた際に必要となる費用です。業務を委託するような場合は、対象外となるので、注意してください。

【助成対象として想定される例】
・Webでの認知向上のために必要なSEO対策などをアドバイスしてもらう
・税務、経理の面で税理士よりアドバイスしてもらうこと

【助成対象外の例】
・創業助成事業の申請における書類作成代行費用
・訴訟費用
・業務の一部の遂行となるようなもの

④広告費

販路開拓に係る広告宣伝費、ホームページの制作、パンフレット等の印刷費、展示会の出展費用などが申請できます。

インターネット上にお店を出店する場合の出店料は、この広告費に該当しないため対象外です。また、パンフレットやチラシなどの印刷物は使い切ることが原則なので、未使用のものが残らないようにしましょう。

⑤備品費

こちらは一つ当たりの購入単価が50万円(税込)未満のものが対象となります。

オフィスには欠かせないパソコンやコピー機などから、エアコンなども対象となるようです。以前は10万円未満のものが対象だったので、金額が50万円になって幅広く対象となりました。

②から⑤までの実績報告時の確認書類(証拠書類)は

・見積書、契約書、納品書
・請求書、振込控(振込先が記載されている金融機関発行のもの)、預金通帳・当座勘定照合表等

などが必要で、比較的、実績報告時の確認書類が少ない(取り揃えが楽)なのが特徴です。

4 申請までの流れはどうなっているの?

これらの要件を確認し、必要書類を集め、申請書類を記入します。

申請書提出(平成29年11月1日―11月9日)

書類審査 (平成29年11月中旬-12月下旬)

面接審査 (平成30年1月19日-1月30日を予定)

総合審査会(平成30年2月中旬)

交付決定 (平成30年3月1日予定)

という流れになります。

※交付日以降に発生した経費が助成対象経費となります。

事業期間が1年であれば、1年後に完了報告と検査がなされ、助成金が交付されます。
事業期間が2年間の場合は中間報告・検査の後、助成金が中間交付されます。そして、2年目も同じように完了報告と検査がなされ、残りの助成金が交付となります。

5 助成事業完了後の注意事項

助成事業が終了したあと、助成金が入金されてそれで終わりではありません。5年間にわたり下記のような対応が必要となりますので、ご注意ください。

①関係書類の保存

助成事業に係る関係書類及び帳簿は助成事業の完了した年度の翌年度から起算して5年間、保存しなくてはいけない。

②企業化状況報告書の提出、収益納付

助成事業が完了した年度の翌年度から5年間、助成事業に係る事業化の実施状況について毎年報告書を提出しなくてはいけない。
またこの間に助成事業に対し、相当の収益を得た場合、産業財産権の譲渡又は実施権の設定および他への供与により収益が出た場合は、その収益の一部を納付しなくてはいけない。

③財産の管理

助成事業により取得または効用の増加した財産(備品等)について、その管理状況を明らかにし、かつ、助成事業を完了した年度の翌年度から起算して5年経過するまで保存しなくてはいけない

④財産の処分

取得価格が50万円以上の財産は、一定期間内に処分しようとするときにはあらかじめ公社の承認を得なくてはいけない。また、この財産を処分して得た収入の一部を公社に納付してもらうことがあります。

 

②に含まれる「収益納付と財産処分の項目」はとてもややこしいのと、金額が判断しづらくはっきりと説明できないところがあるので、気になる方は東京都中小企業振興公社に直接問い合わせてみてください。

助成金は受けとったところで、そこで終了ではありません。最後まで事業をやり遂げる為に管理はきっちりやっていきましょう!

 

最後に

こちらの助成金は、今年度で3年目の公募となっており、応募数が増えているとても人気のある助成金となっています。過去の採択率ですが、平成27年度、28年度の2年間で、420件の申請があり、190件が採択されていたことがわかりました(採択率:45.24%、東京都中小企業振興公社発行の資料に記載)。

今年度は更に申請数が増加し、採択率が大幅に減少していることが想定されます。平成29年8月1日に平成29年度第1回創業助成事業の採択結果が発表になりました。どのような企業が採択されたか参考にしてみてください。

それだけ採択されるのが難しくなっているわけですが、事業内容が明確でかつ実現性の高い事業を構想されている方は充分に採択される可能性のある助成金です。ですが逆をいうと、まだ事業に対して、不透明なところのある方は事業内容をよく精査する必要があるかもしれません。助成金はもらうまでも、もらってからも、とても労力を使います。自分自身の事業を見つめ直すいい機会になるはずです。

また実際に入金されるのは、交付決定日から1年以上先となります。はやくても平成31年5月頃くらいと考えておいてよさそうです。それまでを耐えるためのキャッシュが必要となりますので、ご注意ください。また補助金に採択されている=融資がでやすいという風にお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、金融機関によっては補助金の採択実績があれば良いというスタンスでない場合もありますので、ご注意ください。

採択率を考えると、創業助成事業に採択されたらやる事業ではなく、創業助成事業に採択されなくても実施する事業を申請するくらいでないといけないかもしれません。また申請書類の作成は時間のかかることなので、お早めに準備を開始されてみてはいかがでしょうか。

最後に繰り返しで恐縮ですが、ここに記載されている内容以外にも大切な情報が「募集要項」には記載されています。東京都中小企業振興公社のホームページで、しっかり中身を確認していただき、後から「こんなはずではなかった」ということにならないように気をつけてください。

こちらをご確認下さい⇒ 「平成29年度 第2回創業助成事業」申請について

それでは、皆様の事業が益々発展されることを祈念いたしております。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

テキスト:岸奈津実、編集・文責:田中健一朗