危険な現場に人間が立ち入ることなく作業を行えるようになる遠隔ロボットの技術。上野さんは地球上だけでなく宇宙にも可能性が広がっているこの「どんな空間でも使えるロボット」を開発するために事業立ち上げを決意されました。
今回のインタビューでは遠隔ロボットの開発を行っている当センター利用者の上野さんに、創業のきっかけや思いなどを伺いました。
株式会社Space Robotics 代表取締役 上野 健弥氏
~プロフィール~
大学でロボット工学を専攻。卒業後は大手自動車会社、重工で4輪、航空機用エンジンの機械設計に従事したのち、ベンチャー企業で宇宙機やロボットの開発を行う。
これまでの地上から航空、宇宙までの開発経験を活かして、高放射線下などの過酷な環境で使用可能な遠隔操作ロボットを作れば社会問題解決に役立つと考えSpace Roboticsを設立する。
先ずは地上用途から実用化を行い、ゆくゆくは宇宙用も開発したいと考えている。
株式会社Space Robotic HP:https://www.spacerobotics.jp/
現在の事業内容について教えてください。
最初の製品として、ローカルネットワークでの使用を想定した遠隔操作ロボットのシステム全体を作っています。例えば原発の様な、世の中には物理的な距離は近いけれど気軽には人が立ち入れない場所が意外と多くあります。仮にそのエリアに入る準備に1時間必要だった場合、作業時間に1時間のロスが生じてしまいます。安全性の向上だけでなく、かつそのロスをなくすことで効率化もできるのが遠隔操作ロボットの利点だと考えています。
社名の「Space」は「宇宙」という意味だけではなく「空間」という意味で捉えていて、「どんな空間でも使えるロボットを作る」という意味を込めています。今具体的に進めている事業の技術は宇宙分野にも応用できるものなので、ゆくゆくは宇宙に関する事業も進めたいと考えています。
創業しようと決めたきっかけは何ですか?
以前からお付き合いがあった企業の方と、我々の持っている技術を組み合わせれば、社会に役立ち、また技術的にも挑戦する価値があって、結果、多くの人が幸せになれる製品がつくれるのではないか?と意気投合して、挑戦することにしました。
創業する際に大変だったことは何ですか?
そもそも会社経営のことが何もわからなかったので、「何をしたらいいのかがわからない」ということが一番大変でした。立ち上げ前に本を読んだり、知り合いの社長さんなどに相談したりして情報収集をして事業を進めました。
現在パートタイム契約で作業をお願いしている方がいますが、人を雇用したこともありませんので、雇用契約書や法律関係を勉強するところからスタートしたので苦労しました。
新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?
固定費をかけないようにシェアオフィスでのスタートを考えていて、その中でも金融機関からの融資などを受けるのに信用も得られると思い、区立や東京都が支援している施設を家から通いやすい新宿・渋谷・港区周辺で探していました。いくつかを見学して、創業に関することを何でも相談に乗ってもらえそうだと思ったのが高田馬場創業支援センターでした。
また、高田馬場は交通の便が良く、ちょっとした打ち合せをするのにも利便性がよいので、場所的にすごくいいと思っています。
今後の事業展開、ビジョンについて
まずは、今行っている遠隔操作ロボットの開発を確実に事業化する事に注力しています。現状ではどうしてもまだコストが高いため、限られた領域のみの適用になってしまいますが、継続してコストを下げて適用できる領域を増やしていくことで、ゆくゆくは、潜在的に危険を伴う作業に従事している多くの方が遠隔操作技術の恩恵を受けてもらえるようにしたいと考えています。
また、現在は地上用のロボットから製品化を進めていますが、その実績を基にして宇宙や深海のような新たな領域にも事業を広げていきたいと思っています。地上で築いた技術を基に、宇宙での遠隔操作ロボットへ転用してさらに技術を向上させ、それをまた地球上に還元するような、良いスパイラルを構築できる事業展開していきたいです。
創業する際に相談した社長さんから「社名は自分がそこでやっていくぞという覚悟が決まる名前にするといい」とアドバイスをもらって考えた社名でもあるので、宇宙に関する事業も進めていく予定です。
創業を目指している方にメッセージをお願いします
起業をする際に確かに少し苦労はしましたが、過ぎてしまえば立ち上げ時はそれほど大変ではなかったと思うので、起業するかで悩んでいるのであれば実際に踏み込んでしまった方がいいと思います。
ただ、やはり起業する時よりも、事業を立ち上げた後の方が苦労は多いので、そういう意味では会社の経営に関することは最初にしっかり勉強するなど準備は可能な限りしておいた方が良いです。会社勤めの時は問題があったら誰かが指摘してくれますが、自分が社長になったら基本的に誰も教えてくれないので自分で気付くしかないです。特に手続き関係は問題が起こる前にちゃんと調べておいた方がいいです。