利用者インタビュー:88movie labo株式会社 代表取締役 山岡 由和氏


利用者インタビュー:88movie labo株式会社 代表取締役 山岡 由和氏

「広告業界は世間に大きなショックが起きた時に一番に削られる」これまでの経験から、今回のコロナ禍でも仕事が激減、そして激変したと山岡さんはお話しされました。山岡さんの創業は奇しくもコロナウイルスの感染が日本で拡大を始めた頃。当初の予定通りに事業を進めることは難しかったそうです。しかし、それでも情報を集め、方法を模索した結果、今では予定よりも早く、目指したステップを上がることができたといいます。

今回のインタビューでは、コロナ禍にも折れることなく着実に事業を展開されている当センター利用者の山岡さんに、創業のきっかけや思いなどを伺いました。

88movie labo株式会社 代表取締役 山岡 由和氏

~プロフィール~
アメリカから帰国後、学生時代からバイトをしていた某CMプロダクション入社。
時代もあり1年でディレクターになり、TVCMや企業プロモーションの企画、演出を手がけることとなる。
途中、フリーランス時代を経て、映像制作会社に入社し引き続きディレクターとしてTVCMからWeb映像、企業プロモーション、インフォマーシャルまで経験。
現在は10数年勤めた会社から独立、88movie labo株式会社を創業し活動中。

現在の事業内容について教えてください。

映像関係全般を制作しています。CMだけじゃなくイベントで流したり、イベントを撮影して広告として使用する映像だったり、営業ツールとしての映像などを作っています。最近ではコロナ禍で海外に行けない為、海外の展示会に参加するかわりのWebプレゼン用の映像というBtoBの仕事の依頼もくるようになりました。

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

元々映像制作会社にいたのですが、年齢があがるにつれて管理職になることを求められるようになりました。この業界は「あなたはもういりません」と言われるまで仕事が出来ます。僕は身体が動かなくなるまでは、現場の仕事がやりたいなと思っています。フリーランスでやることも考えましたが、自分が今まで培ってきた技術だったり人脈だったりがあるので、会社にしてやってみたいなと。映像の演出、監督もしながら経営もする、「プレイヤーマネージャー」みたいな立ち位置で仕事をしたいと思ったのが、まず創業を目指したきっかけです。

また、僕は映画が撮りたくてこの業界に入りました。映画以外は全部やったので、あとは「死ぬまでに何とかスポンサーのついた映画を1本撮りたい」ということも創業のきっかけになりました。

創業する際に大変だったことは何ですか?

最初に苦労したのはお金関係でした。今まで「なんとなく」はわかっていても、正確には全然把握してこなかったのでとにかくランニングコストの考え方が甘かった。1本作品を作るのにはスタジオからお弁当など様々な手配をしなくてはいけませんが、最初の取引は信用がないので初日に現金で支払わなければならない。それが出来なくて断った仕事もありました。

今までも最終的に僕が責任を負う立場で仕事をしていたので、共同経営者などは考えずに1人で会社を立ち上げましたが、お金に疎く、一般的な社会人としての経験がほとんどないままだったと気付きました。そんな人でも会社は興せますが、「請求書の作り方」といったような、いわゆる一般的な知識が欠けていました。映像の作業をしたいのに、事務作業もしなければならない。事務作業の仕方がよくわからない。1人になると大変です。お金に関して凄く詳しいプロデューサーのような人がいてくれたら、共同で立ち上げていたかもしれません。でもセンターを利用して、折に触れてそういった小さなことでも相談出来たのがよかったですね。事務所を借りて1人でやっていたら、多分途中で辞めていたと思います。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

僕の得意先と自宅との中間地点で便利な場所だったということと、新宿区は映像制作に対する支援が他区よりもあるということを聞いていて、新宿区に決めました。

オフィスを借りるのにもお金がかかるし…と検索をしていてたまたまセンターを見つけて興味を持ったので、一度話を聞いてみようと。事業計画書や創業時の相談に乗ってもらった時の印象と施設見学をして、僕の仕事をするのに適していると思い入居しました。当初は24時間利用出来る施設の方がいいかと思っていたんですが、今では逆に閉館時間が決まっているからこそ、時間を区切って作業するルーティンみたいなものが出来てメリハリがついたので、それは凄く良かったです。

利用者インタビュー:88movie labo株式会社 代表取締役 山岡 由和氏

今後の事業展開、ビジョンについて

昔からの伝手でとっていた仕事がコロナの影響で全然無くなってしまい、足元がぐらついた時期もありましたが、オンラインでの営業などをした結果、決められた予算の中での制作をゼロから全部任せてもらえるような仕事がもらえるようになりました。またこの時期に日本政策金融公庫さんからお金を借りられて、キャッシュフローも大分うまくなってきたので、今までは断らざるを得なかった大きな仕事も受けられるようになってきています。今後は大きな仕事の受注を増やしつつ、事務所兼試写室を持ちたいと思っています。

試写室は制作した映像をお客様に見てもらいながら修正作業などをして完成させる編集の為の部屋ですが、高額な使用料がかかる為色々な人が困っています。それならば自分で作ってしまって、使わない時は割安でレンタルしたらどうかなと。また、コロナの影響で大人数をこの試写室に入れることが出来ないので、5G回線を使ってお客様には遠隔で確認をしてもらうリモート編集室というものを考えています。今までのネット回線ではどうしてもタイムラグや画像の劣化が生じて難しかったので、今後システムを構築していきたいです。

加えて、お金やスケジュールの管理をしてくれる人や、僕が撮影している間のお客様の対応や全体の統括をしてくれるような人を来年くらいには雇いたいですね。今一緒にやっている人を誘ってみようかと思っています。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

専門職に特化していた人が創業する場合は、僕のように専門以外のことで苦労すると思うので、よく調べた方がいいですね。特に会社の作り方や起業に関する講習には行った方がいいと思います。

そして最初に決めたことは変えないことです。変えてしまうと色々なものがブレてしまうと思います。コロナ禍になって1年以上が経ち、苦しい状況の中で本業以外のことを考えだすこともあると思いますが、最初に決めたことをまずやり遂げてみてください。皆さんそれなりの思いで創業されると思うので、沢山の人に相談して、国や自治体からの補助なども活用して頑張って欲しいですね。