利用者インタビュー:株式会社FromTo 代表取締役CEO 宮城 浩氏


利用者インタビュー:株式会社FromTo 代表取締役CEO 宮城 浩氏

今年世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。その影響は我々のライフスタイル、働き方にも大きな変革をもたらしました。
リモート、テレワークという働き方により「移住」という選択肢が注目されるようになった今はまさに追い風だと語る宮城さん。

今回のインタビューでは、「地方移住」「地方の働き方改革」に新たなビジネスチャンスを見い出し、地方の価値を当センター利用者の宮城さんに、創業のきっかけや思いなどを伺いました。

株式会社FromTo 代表取締役CEO 宮城 浩氏

~プロフィール~

1986年生まれ沖縄県出身。
大手グループ企業の地元IT企業にてSEを経験し、上京後フリーランスエンジニアに転身。
その後、キャリアアドバイザーとして活動しエンジニアコミュニティを運営。
コミュニティのメンバーを巻き込み株式会社FromToを設立。
地元沖縄での「沖縄は給料低いのが当たり前」という原体験からflatoを構想。
flatoを通じて「いま、地方が熱い!」という文化を創る。
現在静岡県浜松市に移住。会社はフルリモート。

株式会社FromTo HP:https://from-to.biz/

現在の事業内容について教えてください。

「地方移住のハードルを下げる」というコンセプトで「flato」というサービスを展開しています。
移住は就職活動に似ていると捉えていまして、就活の場合「本当にそこでいいのか」を考える際にまずは情報収集をしますよね。OB訪問をして、インターンシップなどで実際に働いてみてそこから決めるという流れになると思います。移住も同じで、情報収集をする必要がある。だけど移住を検討すると直接現地に行くしかないのが課題だと考えています。現在ある「お試し移住」のサービスは行政が行っているんですが、そうなるとどうしても地域目線の「いいところですよ」が多くなり偏った意見になってしまう。そこで現地に実際に移住した方、活動をされている方の本音が聞けて、直接相談ができる「移住版OB訪問」というサービスを現在は展開しています。生の声を色々聞くことによって「移住失敗」というケースをなくしていきたいです。

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

フリーランスを経て18年に会社を設立しました。出身が沖縄県で現地の会社でSEとして働いていて、東京への転勤をきっかけに転職を考えたんですが、その時に「人」ではなく「経歴」と「土地柄」で見られたというのが納得いかず、独立してフリーランスになり、同じフリーランス向けのキャリアアドバイザーをしていました。ただ、正直その事業自体がずっと続くとは思えないという不安がありました。その頃の相談者が今一緒に事業を行っている面々なんですが、エンジニアには「スキルはあるけど企業で埋もれている」ような方が非常に多い。「エンジニアは資産」だと思っていたので、この仲間たち(エンジニア)と何か面白いことを一緒にやりたいなと。
自分の独立時の経験から「地方の定説を覆したい」「今後フリーランスという働き方がくる」という思いがあったので、「イノベーションを起こすようなフリーランスを対象にしたサービスを作りたい」と考えた時、会社を作ることにしました。フリーランスの「チーム」という感じではなく、「信頼ある会社」にすることで、お金を借りて一気にバレッジがかけられるだろうと考えました。

創業する際に大変だったことは何ですか?

実は勢いで会社の設立をしたところがあり、「今だったら絶対やらない」という3つの教訓がありました。

1つはオフィスが不要であったこと。御苑の近くに借りていたのですが、はじめからリモートでできていて、そのオフィスはあまり活用できずに結局手放したので、僕が使う拠点である高田馬場創業支援センターがあれば充分でした。
2つめは3~5名で始めればよかったということ。コミュニティを運営していたので有志を募って十数名くらいで始めたのですが、大人数だと民主主義的な動きになり意思決定に時間がかかってしまいました。小回りがきく「少人数のチーム体制で」な感じで始めればよかったと思っています。
3つめは300万~500万は貯金が必要だったことです。貯めることはできたんですが、待たずに勢いでやってしまったので少額しか融資がおりませんでした。この3つをちゃんと考えていたら、ある程度準備ができた状態でもっと早く大きくできたと思っています。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

僕は「地方創生」というより「東京一極集中問題」の方を強く意識しています。東京の人達を対象に色々アプローチして地方に関心を向けて、如何に東京から人を引き剥がしていくかというところがサービスになり得る。そんなサービスを展開する上で「東京の中心はどこだろう」と考えた時に新宿区かなと。地方からすると「新宿」はブランドになっていて、「新宿にオフィスを構えているスタートアップ」というだけでもアピールがしやすいということもあります。
あとはメンバーが集まりやすい、アクセスのよい場所を考えたら新宿でした。

今後の事業展開、ビジョンについて

地方移住に関する事業やサービス展開というのは全て行政が行っているのが現状です。このロジック全てを我々のサービスに置き換えたいなと思っています。また、各地域でバラバラに提供されている情報も集約して、移住を考えている人により適したプラン提案していきたいなと。

移住も含め、都内から地方への導線を考えていくことを「地方にいる人の働き方改革」と考えています。地方での雇用形態は一般的なスタイルがほとんどですが、これからはフリーランスやパラレルワークといった働き方を提案していきたい。コロナ禍で地方への直接営業や販路開拓などが難しくなった今、現地の人にそれを委託する「パートナー開拓」に注目しています。オンライン営業が普及してきたとはいえ、まだまだ直接のやりとりが重要な分野もある。顧客目線に近い現地の人と繋ぐことでフォローをしてもらいながらきめ細やかなサービスの提案をしてもらえる。それを代理店や企業などの大きな組織にではなく、もっと身近な個人に依頼するという時代が来ていて、我々はその導線になり得るかなと思っています。地方に住む誰もが「移住コーディネーター」や「現地のパートナー」になることができる。それは地方の働き方改革にも繋がっていくのではないでしょうか。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

先にもお話した3つの教訓は大事です。スモールスタートでいいと思います。「人」「お金」「場所」この3つの最低限があること。技術をもった「人」がいれば「もの」が作れます。300万~500万の「お金」があれば、その人と数ヶ月間色々試行錯誤ができて、資金がなくなってきたタイミングで別の資金調達をするという方法もできます。人と作る手段があれば、「場所」は最低限を確保できていればいいと思います。コロナウイルスという障害で「別に出社しなくてもいい」と沢山の人が気づけたのは大きな影響です。何が必要か、考えることは大事だなと身をもって知りました。