創業時に必要な「許認可」について

【コラム】創業時に必要な「許認可」について

私たちは基本的に、誰でも好きな事業を好きな時に創業をすることができます。
しかし、だからといって「菓子職人になりたい!」と思った人がすぐに自宅でお菓子を売り始めていいわけではありません。
職人に限らず医師や不動産業等どんな事業であれ、勝手に、無制限に皆が始めてしまっては社会は混乱してしまいます。
そのため、創業する内容ごとに必要な条件というものを国や自治体が定めており、その条件をクリアしないと基本的には創業できません。

今回のコラムでは、創業する際に事業内容によって義務づけられる行政からの許可や特定機関への届出といった、創業にまつわる「許認可」について解説します。

 

 

「許認可」の取得を怠った場合のリスク

それではどういった場合に「許認可」は必要になるのでしょうか?

例えば「売っているものを仕入れて、インターネットで売る」いわゆるEC(電子商取引:インターネット通販など)の場合は、店舗もいらないため一見すると許認可は不要なように思えます。
しかし実際は、売っている商品の種類によっては申請や免許が必要です。
例えば、食品や酒類、健康食品や医薬品・化粧品などといったものを取り扱う場合は、それぞれに対応した許認可が必要になってきます。
これは、自分で製造する・しないは関係なく、これらの対象商材を扱う場合は常に許認可が必要ということです。
自分では一切加工せず、売っているものをそのまま売る場合であっても例外ではありません。

許認可が必要な事業であるにも関わらず、軽く考えて許認可の取得を怠ると、営業停止命令だけに止まらず、罰金や懲役といった厳しい処分が下されることもあり得ます。

創業する際には、ご自分が選んだ事業内容に許認可が必要なのかどうか、またそれはどういった申請内容なのかを事前にしっかりと調べることが重要です。

【コラム】創業時に必要な「許認可」について

 

 

 

「許認可」の種類

まず、一口に「許認可」と言っても、大別すると以下の五つに分類されます。

【届出】

指定の行政機関に届け出ることで営業が可能になるもの

【登録】

指定の行政機関に届け出て、規定の名簿に登録されることで営業が可能になるもの

【認可】

指定の行政機関に届け出て、規定の要件を満たすことで営業が可能になるもの

【免許】

特定の資格をもつものが特定の行政機関に届け出て、規定の要件を満たすことで営業が可能になるもの

【許可】

特定の行政機関に届け出た後に審査が行われ、合格することで営業が可能になるもの

これらの許認可の手続きは、ただ書類を提出すればいいといったことはなく、ほとんどの場合でその申請や届出を受理するかどうかを判断する法令に基づく何らかの基準が存在します。
そのため、申請を行う際には、どういった要件を満たす必要があるのか、また自分が想定している事業内容がその基準を満たしているかどうかを、事前に指定の行政機関の窓口に確認するようにしましょう。

特に店舗を構える事業を行う場合は、条件によっては後から大規模な工事が必要になる場合もあり得ます。
また、病院や不動産業のように、申請にあたって事前に免許や特定の証明書を取得しておかなければいけないような場合もあります。
準備を始めてから実際に取得するまで、許認可ごとに必要な期間は違いますので、許認可の取得要件の情報は、創業準備のなるべく早い段階で集めることが重要です。

 

 

 

「許認可」が必要な主な事業内容

以下の表は、新宿区で創業しようとした時に必要になる代表的な許認可申請の種類と内容の一例をまとめたものです。

事業内容 許認可 必要な申請 申請先
レストランや喫茶店など、食事や飲み物を提供する飲食店 許可 飲食店営業許可申請 新宿区保健所
居酒屋・BARなど酒類をメインに深夜まで営業する飲食店 許可 飲食店営業許可申請 新宿区保健所
届出 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 所轄警察署
包装されている食材を仕入れ、加工せずに販売する事業 許可 食料品等販売業営業許可申請 新宿区保健所
アルコール類を販売する事業 免許 一般酒類小売業免許申請 所轄税務署
映画館、演劇ホール、ライブハウスなどの興行場 許可 興行場営業許可申請 新宿区保健所
自分の持つ物件に屋上看板を作り、広告収入を得る事事 許可 屋外広告物許可申請 東京都都市整備局
許可 道路占用許可申請 所轄警察署
ホテルや旅館などの宿泊業 許可 旅館業許可など 新宿区保健所
時間貸しの有料駐車場 届出 路外駐車場設置届出 新宿区みどり土木部
病院や診療所 許可 診療所開設許可 新宿区保健所
薬局やドラッグストア 許可 薬局開設許可、医薬品販売業許可など 新宿区保健所
訪問介護、通所リハビリテーションなどの介護事業 許可 介護保険施設指定許可申請等 東京都福祉保健局
床屋や理容室、美容院 届出 理容所開設届 新宿区保健所
整体院、針灸、指圧、マッサージ所等 届出 施術所開設届 新宿区保健所
クリーニング店 届出 クリーニング所開設届 新宿区保健所
リサイクルショップや古本屋などの中古品を販売する事業 許可 古物商許可申請 所轄警察署
質屋 許可 質屋営業許可申請 所轄警察署
ペットショップ 登録 第一種動物取扱業登録申請 東京都福祉保健局
私立学校 認可 東京都私立高等学校等設置認可 東京都生活文化局
保育所 認可 児童福祉施設設置認可申請 東京都福祉保健局
不動産業 免許 宅地建物取引業免許申請 東京都都市整備局
貸金業 登録 貸金業登録申請 東京都産業労働局
建設業 許可 建設業許可申請 国土交通省関東地方整備局
人材派遣サービスや職業紹介を行う事業 許可 労働者派遣事業許可申請 厚生労働省東京労働局
警備会社 認可 警備業許可 所轄警察署
運送業 許可 一般貨物自動車運送事業経営許可申請 国土交通省関東運輸局
タクシー会社 許可 一般乗用旅客自動車運送事業経営許可申請 国土交通省関東運輸局
運転代行業 認可 自動車運転代行業認定申請 所轄警察署
中古自動車販売 許可 古物商許可申請 所轄警察署
ガソリンスタンド 登録 揮発油販売業者登録申請 経済産業省関東経済産業局
貸倉庫、トランクルーム 登録 倉庫業登録申請 国土交通省関東運輸局

なお、警察署へ申請が必要な場合は、事業所の所在地を管轄する警察署へ提出する必要があります。
新宿区の場合は住所ごとに全部で5つの警察署に分かれています。

上記リストはあくまでも一例ですので、創業する際にはこれ以外にもさまざまな許認可が必要になってきます。
店舗を構える場合は消防署の許可が必要なように、一つの事業を行うために複数の許認可が必要になる場合もあります。

実際に申請を行う場合はいきなり持ち込むのではなく、詳細について各行政機関の相談窓口や専門家へ事前に相談するようにしましょう。

 

 

 

「許認可」は事業内容に対して行われるもの

例えば「旅館業」を営む際に、宿泊というサービスだけ提供するのであれば保健所へ申請する「旅館業許可」が対応した許認可となります。
しかし一般的な旅館業では宿泊以外にも、お客様に食事や温泉などさまざまなサービスを提供するケースが多いと思われます。
そういった場合は、食事を提供するのであれば「飲食店営業許可」、温泉を提供する場合は「温泉利用許可」、お客様のお召し物をクリーニングする場合は「クリーニング所開設届」など、提供するサービス内容に合わせてさまざまな許認可を複合的に取得する必要があります。

許認可は事業内容に対して出されるものですので、主となる事業と違う分野であっても提供するサービスごとに許認可の取得が必要になることを覚えておきましょう。
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創業時の「許認可」取得時に重要なこと

これらの許認可が、創業後に営業をしながら取得しても問題のないものであれば、そこまで注意する必要はありません。
しかし一般的に、許認可が必要な場合はその許認可が取得できない限り営業開始できないといったものがほとんどです。

たった一つの申請が通らないために予定していた事業が全てストップするといった事例も珍しいことではありません。
特に店舗を構える事業の場合、店舗設営や準備が全て終わり、営業開始できる状態になってからでないと審査してもらえないケースが多々あります。そのため、営業開始を目前にしてストップがかかったり、追加工事が必要になったりすると、予定していた収入も見込めず、経営的に非常に大きなロスとなってしまいます。

許認可を取得する必要がある場合は、なるべく早い段階で情報収集をするようにしましょう。
またその際は、知見のある人への相談だけでなく、事業計画書や店舗の図面といった「事業内容が具体的に分かる資料」を元にして専門家や申請窓口へ直接確認した方がいいでしょう。

創業時の許認可の取得には、情報収集と事前調整をしっかりと行うことで、申請時になるべくスムーズに許可が下りるように準備しておくことがとても重要です。

 

新宿区内で創業する際の各許認可の詳細については、以下の窓口へ直接お問い合わせください。
また、許認可の条件は各自治体により異なる場合があります。
新宿区保健所
新宿区みどり土木部
新宿警察署
東京都都市整備局
東京都福祉保健局
東京都産業労働局
東京都生活文化局
国土交通省関東地方整備局
国土交通省関東運輸局
厚生労働省東京労働局
経済産業省関東経済産業局