利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏


利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏

いつも明るい内山さんの運営する「アトリエたいよう」は、いつ行っても子どもたちの笑い声に包まれています。
どんなに疲れていても、どんなに具合が悪くても、かわいくて大好きな子どもたちにさえ会えれば、みんなから力をもらって元気に働けると話す内山さん。
今回のインタビューは、北新宿エリアで放課後等デイサービスである「アトリエたいよう」を運営する内山さんに、創業することになったきっかけと、そこへかける想いについてうかがいました。

利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者/株式会社たいよう 代表取締役 内山 恵美子氏

~プロフィール~
【2017年7月 高田馬場創業支援センター利用開始】
1984年生まれ。東京都出身。大学中退後、ペットホテルや重度介護者の訪問介護事業に従事。
2011年の東日本大震災の際は、福島県の大原綜合病院にて病棟保育士ボランティアとして5ヵ月間勤務し、小児科病棟の病棟保育士ボランティアをする中でNICU(新生児特定集中治療室)の子どもたちと関わりを持つ。
その後、宮城県石巻市に移住。石巻市立開北小学校にて特別支援員として1年間勤務する。
東京に戻った後は、NPO法人でのガイドヘルパーや特別支援学校の介護支援職員などに従事。
2017年より株式会社たいようを設立し、北新宿にて放課後デイサービス「アトリエたいよう」を運営。現在に至る。

施設住所:東京都新宿区北新宿4丁目4-13ストーク北新宿103
アトリエたいようHP:http://atelier-taiyo.jp/

現在の事業内容について教えてください。

「放課後等デイサービス」といって、障がいのある子どもたちや、成長・発達に少し心配のある子どもたちを放課後にお預かりするサービスを行っています。
私たちの施設はその中でも、「アトリエ」という形をとることで、創作活動ができる空間を提供しながら、子どもたちを預かる場所となっています。

「放課後等デイサービス」についてもう少し詳しく教えてください

「放課後等デイサービス」とは厚生労働省が規定する指定障害児通所支援事業の一つです。
その一つである「児童発達支援」が0歳~5歳の未就学児を対象としているのに対し、「放課後等デイサービス」では6歳~18歳の就学児童を対象に、放課後や週末、夏休みなどの長期休暇中に、日帰りで通える施設で行う支援を指しています。

利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

もともと母が小学校の特別支援学級でボランティアをしており、母が大好きだった私は特別支援学級に頻繁に通っていて、そういった障がい者の子どもたちと一緒の環境で育った影響があります。
小さい頃は生物学者に憧れていたのですが、成長するにつれて生物学者は動物がかわいそうになるので自分には無理だなと気付いて諦めました(笑)

その間も継続して、障がい者の人権について調べたり関わったりしてきたので、就職する際には自然な流れで障がい者支援の仕事を選択していました。
最初は歌舞伎町にある重度障がい者訪問介護の仕事に就き、東日本大震災の時は、福島にある総合病院の小児科病棟でボランティア活動をしたり、石巻の小学校で特別支援員として勤務したりしました。
その後、東京に戻ってからは特別支援学校やガイドヘルパーなどで経験を積みました。
そういった環境で働く中で、行政施設で出来ることの限界や、もっと自分らしい支援をしたいといった気持ちが自分の中でどんどん明確になり、周囲の後押しもあって創業に踏み切りました。

なぜ「アトリエ」なのですか?

そもそもの理由は、小さい頃とても貧しい家庭環境で育ち、食費や学費もままならないような状況でも、母がアート教室に行かせてくれ、それを通して自由な発想や豊かな心というものを学んで育ったということがあります。
その教室は決められたやり方ではなく、自分で好きなことを何でもしてもいいよと認めてくれる空間で、私はそんなアート教室が大好きでした。
家庭環境は貧しく、父親の暴力もあって辛い幼少期でしたが、それでもまっすぐ育つことができたのは、母が通わせてくれたアート教室や美術館で、アートを通してたくさんのことを学ぶことができたからだと思っています。
そのため、自分がやるんだったらアートを基調としたものにしようとだけは初めから決めていました。

そんな中、四国のとある病院が行っているホスピタルアートについて、テレビで特集されているのを見ました。
そこはアートディレクターが常駐している日本で唯一の医療センターで、その番組で紹介されている内容を見て、本当に圧倒されました。

これは直接見るべきだと思い、その番組で紹介されていたホスピタルアートのディレクターである森合音さんに会いに四国まで行きました。
森さんは突然訪問した私に本当に優しく対応してくださり、いろいろと相談する中で「あなたは自分のアートのストーリーを語れる人だから、あなたみたいな人こそホスピタルアートをやるべき。自分の名前を好きに使っていいし、アートディレクターと名乗っていいから、絶対に実現しなさい!」と熱く応援していただきました。
そこからイメージが膨らんでいき、今の「アトリエたいよう」の形になりました。

今もまだ試行錯誤していますが、創作活動を通して、子どもたちに人に優しくて愛される人になってほしいという想いだけは、特別支援学校で働いていた頃から変わっていません。

アートは言われたからやるものではなく、自主的に自分からやりたいと思う気持ちが大事なので、一人一人の気持ちや感性を大切にして、変に遠慮したりせずに、自分の気持ちを素直に伝えられる子に育ってもらうことが私たちの願いです。

利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏

創業する際に大変だったことは何ですか?

一番辛かったのは申請などの書類作成です。
今までデスクワークや事務作業に一切携わってこなかったので、WrodやExcelを使ったこともなく、この書類作成が本当に苦痛でした。
やり方さえ分かっていればそこまで難しい書類ではないらしいのですが、創業準備の当時は毎日毎日書類作成に追われて、視力も随分落ちてしまいました(笑)

また、知らない人の前で話すことが本当に苦手なので、さまざまな人に会う機会がたくさんあっても、いつも早く帰って子どもたちと遊びたいとばかり考えていました。

創業する以前は、どんなに疲れていても、どんなに具合が悪くても、目の前にかわいくて大好きな子どもたちがいるから元気に働けていましたが、準備期間はまだ見ぬ子どもたちのためにやっているとはいえ、本当に辛い期間でした。
自分で決めたことなのでなんとかやり切りましたが、自分に合わない事務仕事をずっとやり続けるのは私には絶対に無理だなと痛感しました。

高田馬場創業支援センターをご利用してみていかがですか?

先ほども言いましたが、私は書類仕事が本当に苦手なので、創業支援センターのサポートがなければ、私は絶対に創業出来ていなかったと、この点だけは断言できます(笑)
必要な書類やその書き方など、センターには本当にお世話になりました。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

家から近いというのが一番の理由なんですが、今「アトリエたいよう」がある、この北新宿というエリアでやろうと思ったのには他にも理由があります。
事業拠点を決めるために、子どもの数や他の放課後等デイサービスの分布図を作ったところ、このエリアに競合となる他の放課後等デイサービスがなく、さらに徒歩で行ける圏内に特別支援学級を抱えている学校が3校あって、さらに子どもが1,000人以上いる団地が近くにある(※注:放課後等デイサービスは医師からの診断書があれば普通級に通う子も利用可能)……等のマーケティングの結果から、現在のこの場所を事業拠点として選びました。

また、放課後等デイサービスは業界的には頭打ちなところがあり、開設の許認可について以前よりも厳しくなっているという近年の状況があるのですが、一方で新宿区では障害児通所支援事業施設の数が劇的に足りていないというのも理由としてあります。
現在でも、他の区に比べるとその数はおよそ半分程度であり、キャンセル待ちをしている子がたくさんいるのに、認可要件が厳しくなっているため新しい施設が出来にくいといった理由もあったため、この場所にこそチャンスがあると考え、メインの事業拠点を新宿区にしました。

利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏

今後の事業展開、ビジョンについて

いつか就労移行支援事業もできるようになって、一般就労させたり、それがだめでもうちで働けたりといった仕組みを作りたいと思っています。

放課後等デイサービスは就学児童が対象なので、18歳までは一緒にいることができます。でもその年齢を越えてしまうと対象外となってしまうため、親御さんたちは今度は就職の心配をしなければならなくなってしまいます。
そこで、うちで育った子どもたちが私たちのところで働くような仕組みができれば、18歳を過ぎても一緒にいられるし、親御さんたちも心から安心できると思います。

お母さんたちが安心できるというのが何よりも大事なので、そういった仕組みを新宿区で実現して、地元のみんなで支え合って、まるで近くにいる親戚のように、お互い気をかけながら長年一緒に過ごすような地域の関係を作ることが私の理想です。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

創業を迷っている方は、本当にそれが好きなことであれば絶対にやった方がいいと思います。
逆に、本当に好きなことじゃないと、(創業するのは)すごい大変です。

創業して初めて気づいたのですが、私は人に言われた何かをやるのが苦手で、自分で決めた何かを自分でしたい人間なので、人に雇われるのは向いていなかったんだな、と本当によく分かりました(笑)

もちろん、産みの苦しみはあったんですが、それでもいざ創業をしてしまえば、自分で全部決めて自分で責任がとれて、全て自分次第という状況は、こんなに楽しくて幸せなことはないです。

ですので、創業して実現したいことが本当に自分の好きなことなのであれば、絶対に創業にチャレンジした方がいいと思います。

利用者インタビュー:放課後等デイサービス アトリエたいよう 管理者 内山 恵美子氏