利用者インタビュー:日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤斉之氏

利用者インタビュー:日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤斉之氏

「『自分で情熱を傾けられることをやる』というのがビジネスをずっと続けていく上では大事」
人と人との繋がりこそがビジネスの根幹であることを体現するかのように、松澤さんのビジネスは繋がりが繋がりを呼び、次々に広がりをみせます。日本の素晴らしい工芸品を世界へ伝える松澤さんが、なぜ事業の拠点として新宿区を選んだのかお話をうかがいました。

日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤斉之氏

~プロフィール~
【2016年12月 高田馬場創業支援センター利用開始】
中国四川大学に留学後、96年東京理科大学卒業。新卒でヤオハンジャパン入社。教育事業(現、株式会社ビジネス・ブレークスルー)立ち上げ期に参画し、起業家育成学校アタッカーズビジネススクール事務局長。新規事業開発支援を特長とするコンサルティング会社、株式会社フロイデ役員(現在、パートナー)。ECのアマゾンジャパン、ホーム事業部にてインテリア・雑貨・工芸関連商品の担当バイイングマネジャー業務に従事。信金中央金庫など金融機関との新規取引メーカー開拓スキームを確立し1000社以上のEC化に貢献。16年日本工芸株式会社設立、代表取締役社長。SBI大学院大学MBA事業計画演習講師。共著:企業における「成功する新規事業開発」育成マニュアル(日本能率協会総合研究所)

会社住所:東京都新宿区高田馬場1-32-10
工芸品展示所(要予約):東京都中央区湊3-5-2 itadaki BLDG.2F
https://www.japanesecrafts.co.jp/

現在の事業内容について教えてください。

主に日本の工芸品の販売を行っています。事業内容は大きく分けると三つあり、まず一つは越境ECとして工芸品を自社のサイトで直接販売しています。これは当社のECサイトを通じて国内外からどなたでも購入が可能です。

次に海外販売事業として海外で日本の工芸品を販売したい人への卸売を行なっています。
(現在、中国・台湾・香港・US など)
販売先の要望に合わせて色違いや希望の価格帯に合わせたものを探すといった商社機能を担っています。

三つ目は今までの知見を活かしてECや販売についてのサポートや講演など、販促支援・販路開拓サポート業務を行っています。

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

前職で日本中を回って1,000を越えるメーカーさんとお会いする中で、日本の職人さんたちは素晴らしい工芸品を持っているにも関わらず、ECの分野への販路開拓について十分な取り組みができていないと知りました。工芸の市場は最盛期の五分の一程度にまで落ち込んでいて、場合によっては「その技術を持つ職人の最後の一人」というような状況も見受けられました。

行政の施策としての支援も行われてはいるんですが、助成金でサポートしても、例えばいくら展示会で海外に出展しても、肝心の商品が売れなければ結局は現状を引き延ばすだけです。実際そういった状況が非常に多くあり、そのやり方は違うんじゃないのか、彼ら応援するにしても自分ならもっと他の支援の仕方があるんじゃないのかと思ったことがきっかけです。

利用者インタビュー:日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤 斉之氏

創業する際に大変だったことは何ですか?

大変だったとは少し違うかもしれませんが、一番悩んだのは事業ドメインを決める、つまり自分のビジネスの中で主力事業となる本業を選定することでした。アイデアや構想は複数ありましたが、一つに絞る際にはビジネスパートナーやアドバイザーなど様々な人に相談に行きました。
事業プランを5個くらい作って並べて、その中で「仕入れて売る」という一番シンプルな方法からスタートしようと決めました。そして段階的に広げていこうと。
その部分が自分の創業時に一番悩み、時間をかけて検討した内容でした。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

一番の理由は自宅が近いからなのですが、もともと学生時代から神楽坂など新宿区を中心に過ごしており、この街の雰囲気が好きだというのが大きいです。ですので、センターを出た後のオフィスも新宿御苑が見えるような場所がいいなと思ったりしています。

また、海外留学生をアルバイトとして雇用したいと思い、優秀な海外留学生の多い早稲田エリアで接点を持てればと思ったのも理由の一つとしてあります。

利用者インタビュー:日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤 斉之氏

高田馬場創業支援センターをご利用してみていかがですか?

土日祝日を含め、夜の0時まで開いているのはありがたいです。いろいろとやりたいことがある時に、使いたい時に好きなだけ使えるというのは非常に大きな魅力です。
また、僕のような仕事は作業だけならば自宅でもできるのですが、自分だけで作業をしているとどうしても閉じこもってしまいがちです。しかし、シェアオフィスなら普段は接点のない人とも交流ができ、先日もセンターの交流会をきっかけに海外との取引の話が立ち上がるなど普段出会わないような人との接点があることもシェアオフィスの大きな利点の一つだと思います。

今後の事業展開、ビジョンについて

越境ECサイトはリリースしたので、あとは商材を増やしていくという作業と並行して集客していきます。
海外販売事業については売ってくれる人を探すという作業になり、こちらは当初は属人的な作業から行なっていきます。そのため、まずは海外にネットワークのある人や現地に住んでいる人と繋がりを持っている方とコンタクトしています。自身の店舗の一部で工芸品の展示を作ってもらいオーダーを受けてもらったり、ECサイトでの販売をしてもらったりしています。現地で販売していただく方々には一部の在庫を持っていただき、オーダーに応じて日本からの発送も組み合わせて実績を作っていきます。

将来的には、日本の工芸品の販売網を構築し、ショールームビジネスをしていただく構想です。そこでは実際に商品を見ていただきオーダーを受ける作業と決済を行う、説明販売です。
あとは商品ができ次第発送、のような状態が理想です。
海外の日本の工芸品が好きな人だったり、それらの方々はある程度富裕層だと想定されます。そういったターゲット層へときちんと情報を届けられればニーズを掘り起こせるのではないかと思っています。

利用者インタビュー:日本工芸株式会社 代表取締役社長 松澤 斉之氏

創業を目指している方にメッセージをお願いします

私からそんなに偉そうなことは言えないですが、一つあげるなら「自分自身に向き合って考えてみる」ということですかね。

自分も以前に人から言われた言葉なんですが、「儲かりそうだからやる」というビジネスは他にも同じような人が集まって、たくさんの優秀な人と競わなければいけない。そのため継続が難しくなりがちです。成功した著名な起業家や実業家などたくさん会いましたが、そんな方々でも浮き沈みがあり、数年後にはマーケットから何らかの理由で姿を消していたりすることもあります。

だから、他人と比較するんじゃなくて「自分で情熱を傾けられることをやる」というのが、ずっと続けていく上では大事なんだと思います。そのため、どんなに忙しくても大変な状況でも、充実した気持ちで働けるだけの想いがあるのかどうかということで取り組む事業を決めるのがいいのではないでしょうか。そういう意味で、これから創業される方はご自身が選んだビジネスが本当に情熱を傾けられるものなのかどうかを、もう一度ご自身に向き合って考えてみるのがいいのではないかと思います。