高田馬場創業支援センターの岸です。
今回の記事では、今年度から新宿区で公募されている、「新製品・新サービス開発支援補助金」をご紹介します。
今年度から始まった補助金ということで、認知が高くなっている国や東京都などの補助金と比べて、比較的挑戦しやすいかと思いますので、ぜひご検討ください。
注意点としては、本補助金は新宿区内で事業をされる方が対象になっています。高田馬場創業支援センターをご利用の方はもちろん、区内で創業されている方、事業をされている方は是非ご確認ください。東京都の補助金ですと、対象が東京都全域が対象となりますが、新宿区という少し狭い範囲での公募なので、採択される可能性も少し高くなるかもしれません。
1、いくら、どれくらいの期間、補助されるの
この補助金は、新宿区内で事業をしている法人、個人、またはグループを対象とし、新製品や新サービスを開発したり、リリースする際にかかる経費を一部について補助するというものです。
補助率:補助対象経費の2/3以内
限度額:100万円まで
※対象経費を150万円以上支出した場合に、最大100万円が補助されます。
また、補助対象期間は本年度中となっていますので、申請日から2019年3月31日までとなります。
東京都の「創業助成事業」や国の「ものづくり補助金」などと比べると少額ですが、逆を言うと小規模な取り組みでも申請しやすいのも特徴です。
2、この補助金の対象者
こちらの補助金の対象者となるのは以下の方です。
①中小企業者(中小企業基本法に規定されている中小企業者)
【法人の場合】本店登記が新宿区内になされている法人
【個人の場合】事業所が新宿区内にある個人
②グループ
法人や個人で結成する任意のグループで、そのうち2/3以上が区内に本店・事業所がある団体
3、補助の対象となる事業
補助対象となる事業は、下記の2つです。
①「新規性のある製品」の開発
②「新規性のあるサービス」の開発
応募要項によると、
「新規性」とは、「当社比」での革新ではなく「地域での先進事例」「業種内での先進事例」にあたるかなど、『客観性』な視点から新規的であることをいいます。(通常の営業活動は対象外です。)
とあります。
「会社内での新しい取り組み」という範囲に留まらず、業界や他社の状況も踏まえた上で、新規性のある取り組みであることが重要なのかもしれません。
新規性のある取り組みをすぐに実行することは簡単なことではない気がします。しかし、既に新しい製品やサービスに着手されている方、具体的なアイデアがあり、そこに向けて準備されている方には、とてもお勧めです。
事業内容に制限がありませんが、IT関係の事業をされている方は、ソフトウェアの開発に下記の条件が付いていますので、注意が必要です。
(1)開発した商品の最終成果物の製品化・実用化も目的とすること
(2)広範囲の業務・業種・顧客等で横断的に利用可能であり、汎用性及び拡張性に優れた機能を有するプログラムの開発
(3)小範囲の情報を収集、検索するもの、既存の知見をデータベース・プラットフォーム化したものは対象外
限られた方が対象のサービスではなく、広範囲でたくさんの方が使えるようなサービスでないと、条件を満たしていないということで、採択されない可能性があります。
補助対象経費
(1)原材料費等
開発に直接使用し、消耗される原料、材料の購入経費
(銅材、機械部品、電気部品、化学薬品、試験用部品 等)
新しい商品を作る際に必要となる機材や材料も対象になります。
「開発に直接使用し、」とあるので、実際に販売する製品の原材料は、対象となりませんのでご注意ください
(2)機械装置・工具器具
・開発に必要な機械装置、器具類(製作・測定・解析・評価等用)のリース及びレンタル料(補助対象期間に限る)、購入費等
・機械装置を自社で製作する場合の部品の購入経費
・ソフトウェア開発時のレンタルサーバ・クラウドサービス等の費用
※機械装置(ソフトウェア含む)等を購入した場合、購入金額を「法定耐用年数」で按分し、補助対象機関についてのみ補助対象とする。
※法廷耐用年数については別紙「減価償却資産の耐用年数表」を参照。
この項目は他の補助金と考え方が異なるため、特に注意が必要です。
多くの補助金では、特定の機械装置などを購入した場合、その購入金額が補助対象経費となります。しかし、本補助金では、購入金額を法定耐用年数で按分して補助対象経費を算出することになります。
例えば、高田馬場創業支援センターを利用の方の中には、IT関係の事業をされている方がたくさんいらっしゃいます。そして、ITの分野でアプリケーションを開発して自社のサービスを展開したいと考えていらっしゃる方も多いかと思います。PCを補助金で賄いたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
この補助金では、指定された耐用年数に応じて、その年数で割った金額が補助されます。
国や東京都の補助金とは異なり、機械装置・工具器具で支出した経費が、そのまま補助されるのではないということに注意が必要です。
例えば、研究開発用のPCを購入して、その金額が30万円だったとします。
パーソナルコンピュータの既定の耐用年数は、4年となっていますから、
30万円÷4年=7.5万円/年
ということになります。
期間按分になりますので、そこからさらに補助対象期間分の金額を算出します。
購入日が10/1で年度末まで事業を行った場合、そのPCの補助対象期間は6か月です。
7.5万円÷12か月×6か月=3.75万円
補助率は2/3であるので、補助額は約2.5万円となります。
この費目は少し特殊なので、どの程度の金額が補助されるのか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
(3)知的所有権等導入費
・特許・実用新案・意匠・商標等取得に係る費用
・他の事業者からの譲渡、実地許諾に係る費用
開発している新製品やサービスなどの特許を取得する際の費用が補助されます。
「知財として保護しておきたいけど、すべての費用を支出するのほどではないかもしれない」とお悩みの方にこそ、活用していただきたいです。
(4)外注費
・自社で開発・実施することができない一部の事業について、外部の事業者等に外注する経費(機械加工、基板設計、機械委託製作、デザイン設計、ソフトウェア開発等)
・共同研究契約により、共同研究を実施するために要する経費(大学、試験研究機関との共同開発等)
外注費については、他の補助金と大きな違いはありません。
(5)技術・開発指導等
・各種調査・指導を専門家等に委託した場合の経費
・開発に係る改良等のマーケティング、モニター費用
新しいサービス・製品をつくれたが、マーケティングにまわす費用まで賄えなかったという方には必見です。どれだけ良いサービス・製品であっても、知ってもらえなければ意味がありません。より多くの方に知ってもらえるような取り組みにご活用ください。
(6)直接人件費
・開発に直接従事する役員及び正社員の人件費
・ソフトウェア開発に係る部分に直接従事する時間のみ助成対象
※雇用保険の加入者であること(役員は雇用保険不要)
※個人事業主は国民健康保険加入のこと
※上限額は補助対象経費の1/2以下(上限50万円以下)
どの補助金もそうですが、直接人件費については少し複雑になっています。「新製品・新サービスに従事した時間数」のみ補助の対象となるので、「人件費単価一覧表」に定められた金額で直接従事した時間数を計算し、申請額を算出します。
新製品・新サービスの業務に従事した時間と、それ以外の通常業務にあたった時間とをきっちり記録しておく必要があり、きっちりとした日頃の労務管理が求められます。
役員の人件費も対象になっているのが特徴で、人件費を計上したい方は多いかもしれません。しかし、実績報告書を作成する際に、他の項目と比べて準備する書類が多くなりますので、経費計上するか、しないかは慎重に判断されることをおすすめします。
申請・交付までのながれ
これらの要件を確認し、申請書類を作成し、添付する書類を準備します。
1、申請(2018年4月17日~2018年5月31日午後5時必着)
提出書類は、西新宿にあるBIZ新宿(新宿区立産業会館)内の産業振興課に提出することになります。先着順となっており、応募が40件に達したところで締め切られますので、早めに提出されることをおすすめします。
⇓
2、一次審査
一次審査は書類審査となります。
⇓
3、一次審査の結果通知(2018年6月末ごろ)
⇓
4、二次審査(7月中旬ごろ)
事業内容をヒアリングされる審査となります。申請者が西新宿にあるBIZ新宿(新宿区立産業会館)に出向くことになります。
⇓
5、交付決定(7月下旬ごろ)
二次審査の結果通知と、補助金額の決定がされます。
⇓
6、事業報告
申請した事業が終了次第、新宿区へ事業報告を行います。
⇓
7、交付
実績報告書が無事承認されると、補助金が交付されます。
補助金は後払いですので、交付される前までのキャッシュフローには気を付けなければいけません。
補助金交付後の注意点
実績報告書に基づいて、事業の進捗状況などのヒアリングが行われます。こちらは2019年5月中旬~下旬ごろに予定されています。また事業終了後、3年間にわたり状況報告書を年に1回提出する必要があります。
最後に
繰り返しになりますが、本補助金は今年度から新しくはじまったものです。
最大申請受付数が40件で、その中から7件が採択されるため、採択率は低く見積もっても、約5.7件に1件くらいは採択される(採択率:17.5%)ことになります。採択率の下限が決まっていることも特徴の一つです。
今後、知名度も上がってくれば、先着順で早く締め切られる可能性もあるため、次年度以降に申請される方は注意が必要です。また、他の補助金と同様に初年度は採択率が高くなる傾向がありますので、まだ申請が間に合う方は挑戦されてはいかがでしょうか。
実際に入金されるのは、交付決定日から一年弱先となります。その期間、支出に耐えるためのキャッシュが必要となります。また「補助金に採択された=融資が受けやすい」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、金融機関によっては補助金の採択実績があれば良いというスタンスでない場合もありますので、資金繰りにはご注意ください。
ここに記載されている内容以外にも大切な情報が「募集要項」には記載されています。新宿区のホームページで、ご自身でしっかりと中身を確認していただき、後から「こんなはずではなかった」ということにならないようにお気をつけください。
こちらをご確認下さい⇒ 平成30年度新製品・新サービス開発支援補助金 応募要項
それでは、皆様の事業が益々発展されることを祈念いたしております。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
テキスト:岸奈津実、編集・文責:田中健一朗