「気になる!?オウンドメディア活用と効果の本当のところ。」イベントレポート(後編)

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◆どうやって考える!?記事数を増やすためにも大切なネタ探しのコツ

田中:問い合わせやマスメディアなどの効果を考えると、記事の内容も何でもよいわけではありませんよね。

門伝:みんなが知りたいことをマーケティングするようにしています。例えば、賃貸で出ていくときにいくらとられるのかとか敷金について友人やお客さんからよく聞かれることを記事にしてみたり。みんなが疑問に思っていることを書くようにしていますね。

田中:なるほど。

門伝:不動産って最近は色々情報載っていますが、私が会社を始めた当初は出回っている情報がかなり少なかったんです。一般的に口頭でしか説明されないことを、詳しくわかりやすく書いていきました。

田中:最近の記事は、過去と比べると内容は変わってきていますか?

門伝:少し変わってきています。例えば、スポンジに両面テープがついた「ニトムズのすきまテープ」というものを取り上げたりしています。一見不動産と全く関係ないように思えますが、大きく考えると生活にまつわるものという点では関連しています。こういった記事も最近は増やしています。

ニトムズのすきまテープ

田中:マーケティングで狙う層を意識して、日常生活の記事を書いているのでしょうか?

門伝:そうですね。まあネタが無くなってきたという事情もあるのですが(笑) あとは自分たちの日常を載せています。例えば「今日はこれを食べました」とか。そうすることで、どういうお店なのかわかってもらえます。

田中:これだけの記事を書くとなると、ネタ探しが大変そうですね。

門伝:そうですね。友人やお客さんのお話以外にはGoogleのキーワードプランナーというものを活用しています。これは、例えば「不動産賃貸」と検索した人が月間何人いるかということがわかるものです。また、サジェストを利用して検索ワードから世の中のニーズを探ります。例えば、「不動産」といれると「売却 税金」と予測に出てきたとします。そこからニーズを発見し、不動産仲介手数料の記事を書いて、といった流れですね。

田中:こちらが伝えたいこととサイトに見に来る人が必要としていることはまた別の話なんですね。

門伝:そうですね。それは人が集まってきたあとに考える話で、最初はお客さんがどんなことを知りたがっているのか、どんなキーワードで検索するのかなどを意識することが大切だと思います。

◆記事は自分で書いたほうがいいの?ライターさんに任せたほうがいいの?

柿沼さん

田中:門伝さんのサイトはすごく見やすくて凝ったサイトですよね。これはライティングや写真の技術など必要かと思いますが、最初からそのように計画して始めたのでしょうか?

門伝:いえいえ、はじめたばかりの時はここまでのサイトではありませんでした。文章が評価される時代になっていくだろうという話を聞いて、最初は人の役に立つ文章を書いていこうと思い、ブログとしてはじめたんです。そのためにまずやったことは、amazonで「文章 書く」と調べて出てきた本を数冊読むことです。それから自分なり書いていきました。

田中:ライターさんに依頼しないで、ご自身で書かれたんですね。

門伝:知り合いのライターさんや雑誌の編集者さんに相談したとき、なるべく現場にいる人が、文章が多少下手でも書いた方がいいとアドバイスされたんです。現場にいる人が書いた方が、リアリティがありますよね。そんなわけで最初は自分たちで書き始めました。

田中:創業される方は何だか問題意識を持って創業されている方が多いと思うので、最初のうちはご自身で書かれた方がよいのかなと僕も思います。手ごたえをつかめるまではメディアの責任を持つ人が書くのは大事ですよね。ちなみに現在の門伝さんのサイトはだいぶ規模も大きいですが、今はライターさんもいらっしゃるのですか?

門伝:うちは暮らしに役立つことや暮らしにまつわることならネタになると考えていて、小説家の方とか作詞家の方やインテリアライターの方にお願いしています。

田中:いろいろな方に依頼されているんですね。

門伝:そうですね。例えば柿沼さんにはマンションにまつわるショートストーリーの小説をかいてもらっています。こういうのがあったら面白いんじゃないかなと思いお願いしてみました。最近は似たような企画をスーモさんもやっていますね。

田中:幅広いですね!記事も色々とあったほうが面白いですよね。

◆気になる広告効果とどのくらいのコストがかかるのか

田中:オウンドメディアをやっていて良かったなと思うことは何ですか?

門伝:先ほどお話したように広告費の削減、問い合わせの増加、マスメディアの取材もそうですが、広告効果としては、一般的なポータルサイトからの問い合わせに比べて成約率がすごく高いことですね。

田中:具体的にはどのくらい違うのでしょうか?

門伝:不動産は一般的に、問い合わせのうち2,3割しか成約しませんが、うちは7割くらい成約します。問合せをしてくれるお客さんは、サイトを見ているからうちの会社をよくわかっているし、物件ではなくてその会社で買いたいということで来てくれることが多いです。そのためお目当ての物件がなくなっていたとしても、次の紹介につながりやすいです。

田中:いくつもの物件を比べて、決めるまでに時間がめちゃくちゃかかるお客さんも多そうですよね。結局、不動産仲介業者さんはお客さんが成約してくれないと1円にもならないので、その目に見えないコストの削減が自然とできているということでしょうか。

門伝:そうですね。うちのサイトは結構コストパフォーマンスが良いんじゃないかなと思います。一般的な広告で同じくらい問い合わせを獲得しようとしたとき、賃貸だと月30~50万円くらいは広告費をかけないと獲得できないんじゃないかと思います。

田中:記事を書く労力や人手以外のコストはどういったものがありますか?

門伝:強いて言うならサーバー代でしょうか。これも最初のうちはほとんどかかりません。僕なんかは、月額数百円のサーバーからはじめました。しかし、現在は月間35万人くらいが見てくれています。そうすると通常のレンタルサーバーだと難しいため、サーバー代は3,4万ほどかかっていますね。

田中:アクセス数が増えると、サーバー代もだいぶかかりますね。

門伝:そうですね。サーバー代などのコストを補う方法として、ちょっとずるいんですけれど、うちは広告をいれています。そうすると10数万かえってきますね。広告をいれている理由ですが、書いた記事を閲覧している人の中には、別に不動産を利用しない人もいます。少し冷たい言い方をすると、うちのお客さんではなかったりするんです。でも記事はその方たちの役にたっています。1回見たら0.1円くらい頂戴ねといった感じです。

田中:なるほど。ネットの記事は高田馬場周辺に住みたい人だけが閲覧するわけではありませんもんね。あとはサーバーを移行するタイミングも結構重要かと思いますがいかがでしょうか。

門伝:そうですね。うちは今年からテレビなどの露出が増えたのでサーバーを切り替えました。テレビなどで取り上げられるとドーンとアクセス数が増えるんです。放送される直前のタイミングで替えました。

田中:よくテレビ東京のワールドビジネスサテライトの「トレたま」で取り上げられた会社はだいたいその瞬間にサーバー落ちていると聞きますよね。そういう企業は大体ベンチャーだとか中小企業が多いですよね。

門伝:もったいないんですよね。せっかく検索されているのに、サイトを表示できないわけですから。

田中:そうそう。テレビの効果を十分に活かすためにもサーバーは案外重要かもしれませんね。

◆会社のメンバーに経験は関係ない!? 経験よりも大切なものとは。

田中:創業するときに一人で始められる方が多いかと思います。しかし一人でできることにはどうしても限界がありますので、僕としては事業拡大を狙うのであればチームで取り組むことがベターだと感じています。門伝さんは現在3人のチームで事業に取り組まれていますが、最初からそのメンバーだったのでしょうか?

門伝:いえ、最初は僕とアルバイトに週一程度来てもらっていました。

田中:そこから今の3人の体制になっていくわけですね。人を雇うのはコストもかかりますし、どうしてもためらってしまいますよね。

門伝:そうですね、どうしてもコストはかかります。うちはベースとなる売上の達成を基準にやっていました。とはいえ賭ける時期もあるんです。つまり、売上はあがっていないけれど、ここで人員を投入したら売上がつながるんじゃないか、ということです。その時期には人材を投入していました。

田中:なるほど。メンバーはどのように選びましたか?

門伝:うちはまず、能力があることよりもサボらないだとか情熱があるというところを重点に見ていますね。まず理念を話して、共感してくれる人だけをいれています。

田中:1人1人の行動を縛ることはできませんし、大筋で考え方を共有しておくことは大切かもしれませんね。

門伝:そうですね。色々な状況がある中で、仕組みやルール作りをしっかり決め、だれでもできるような仕事のシステムを構築することが大切だと思っています。またうちはふつうの不動産屋さんとまったく違うやり方であることもあり、不動産経験のある人を一切入れていません。

田中:そうなんですか!?

門伝:必ずしも経験者が助けてくれるわけでもありません。自分の事業をどういう形で進め、そこにはどういうメンバーが必要か、ということを考えた方が良いかと思います。

田中:求人はタイミングも大切かと思います。2,3人の規模だと、求人広告を出したら凄く良い人が来てくれたので雇いましたっていう話もあまり聞きませんし、ご時世的には全然人が採用できないどころか面接にも来てもらえませんよね。

門伝:求人でいうと、実はうちに入りたいという人が意外と来るんです。大手の不動産屋に勤めていた人が「次に募集する時は教えてくれませんか」と聞いてくれることもあります。どういう会社でどういうことをやっているか、まるまるわかるサイトとなっていることが理由の1つですよね。どういう理念で仕事をやっているのか発信しておくと、そういう効果もあると思います。

田中:なるほど。これもオウンドメディアのメリットですね。

◆不動産業界のこれからと門伝さんのビジョンについて

門伝義文さん

田中:最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

門伝:3~5年かかるかなと思っていたステージに、2年ほどで到達できたのがよかったなと思います。こういうことを聞かれると、どんどん大きくしていきたいです!と答える方が多いかと思いますが、僕は人の役に立つことを少しずつやっていければなと思っています。

田中:ご自身のペースでやっていこう、といった考えでしょうか。

門伝:元からそんなに仕事が好きだとか儲けたいと思ってはじめたわけではないんです。ですから人の役に立つような市場やツールをインターネットでつくって発信していきたいと思っています。不動産業は、残念ながら思っていたより悪いことが行われていることが多いんですね。

田中:将来、不動産業界はどう変わっていくと考えていますか。

門伝:今、僕は不動産仲介など色々やっていますが、この仕事は5年10年でなくなるんじゃないかなと思っています。そもそも不動産って間に仲介が入って、結構非効率な部分も多いんですね。不動産屋がコンビニより多かったりするし。もっと数が少なくてもよいし、少なくできるはずだと思っています。そういうシステムを構築する側の人間になれればいいなと思っています。

田中:本日は貴重なお話ありがとうございました。

テキスト:小松奈央、編集・文責:田中健一朗