OBインタビュー:株式会社でぃぐにてぃ 代表取締役 吉田真一氏


OBインタビュー:株式会社でぃぐにてぃ 代表取締役 吉田真一氏

株式会社でぃぐにてぃは、吉田さんが19歳のときに事故で頸椎を損傷してから、介護を受ける生活の中で介護の問題と向き合い、「介護する人もされる人も気持ちよくなければいけない」という実感から設立した会社です。『世界いち気持ちいい介護』の理念の下、高田馬場に拠点をおく訪問介護事業所として地域の在宅介護を担っています。

株式会社でぃぐにてぃ 代表取締役 吉田真一氏

~プロフィール~

【2015年8月 高田馬場創業支援センター利用終了】
19歳のときに頸髄損傷で四肢麻痺に。電動車椅子の介護福祉経営士。早稲田大学政治経済学部卒。株式会社もしもしホットラインでマーケティング担当としてクライアントへの提案に携わった後、2014年12月に株式会社でぃぐにてぃを創業。毎日在宅で介護を受ける中で生まれた「こうだったらいいのに」を解決し、『世界いち気持ちいい介護』の理念でお客様と社員を幸せにすべく奮闘中。
所在地:東京都新宿区高田馬場1-29-7-スカイパレス504
http://digunity.co.jp/

OBインタビュー:株式会社でぃぐにてぃ 代表取締役 吉田真一氏

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

「育てても育てても人が離れていきます。疲れました」。私の生活を支え続けてくれた介護事業所のサービス責任者が、深夜、私のケアをしながらそう言って泣いたこと。この人たちの労働環境をよくしたいと思いました。障害を持つ女子大生から、「就職が決まったが出勤準備のため午前5時にケアに来てくれる事業所がない。

どうしたら夢を叶え自立できますか」と相談されたこと。ソフト面をサポートする社会的資源が足りないのです。「同じ人にケアに来てもらいたいと思うことは贅沢なのかしらね」と妻がつぶやいたこと。昼夜ケアが入る生活の中で介護士さんが頻繁に代わることが家族のストレスになっていました。この三つの課題を解決する訪問介護事業者が見当たらない。ならば自分がやるしかないと思いました。

創業する際に大変だったことは何ですか?

まず、妻の同意を得ること。子どもが生まれ、今の住まいを購入したばかりだったので、資料を作り何度も何度も妻にプレゼンをして、1年後に「家計に影響がなければ」という条件で同意を得ました。

開業時には、訪問介護事業所の要件を満たす介護士3名の確保で苦労しました。4月開業予定で3人目が決まったのは3月23日でした。本当に追い詰められて、開業を遅らせることも考えましたが、なんとか要件を満たすことができました。

資金はどうしましたか?

事業所立ち上げの資金と運転資金で約1千万円が必要でした。妻との約束で家計に負担はかけられません。1年間、食費と交際費を削る節約生活をして自己資金300万円を作りました。やるとなったらとことんやる性格なので、ウエストが10㎝細くなるほどストイックな生活をしました。また、高田馬場創業支援センターの紹介で東京三協信用金庫と日本政策金融公庫から合計550万円の協調融資を受けました。親からも100万円を借りましたが、おかげさまで今年中に返済できそうです。

OBインタビュー:株式会社でぃぐにてぃ 代表取締役 吉田真一氏

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

新宿が好きなんです。大学進学を機に上京してずっと新宿に住んでいます。故郷は岐阜県の柳ヶ瀬という繁華街で、繁華街独特の何でも受け入れてくれる雰囲気が新宿と似ているような気がしています。

また母校の早稲田大学には、門に門柱や塀がないんです。これは学びたい人を拒まず受け入れる開かれた大学である象徴だと言われています。この気質を早稲田・高田馬場界隈にも感じるんです。

高田馬場創業支援センターを利用されていかがでしたか?

前職ではマーケティング担当でしたからプラン作りはできたのですが、実際、自分が創業するとなると知識ゼロです。特に、決断することに対するプレッシャーが大きかった頃、気軽に相談できる場所があることが本当にありがたかった。三輪車でやって来た私が、高田馬場創業支援センターという補助輪を付けた自転車に乗り換えて助走し、今ようやく補助輪を外して走り出したという感じです。

今後の事業展開、ビジョンについて

考えていることが三つあります。まず訪問介護事業所を3拠点にします。介護職のキャリアアップの場としても必要です。二つ目は、サービス付き高齢者住宅です。大学生も巻き込み地域に開いて介護現場を知ってもらう拠点をつくりたい。三つ目は、障害のある子どもを預かる放課後等デイサービス事業です。

例えばボランティアで子ども食堂をやりたい人はたくさんいます。そこから介護の担い手が出れば雇用の窓口にもなります。この三つの事業で、まさに「ゆりかごから墓場まで」お世話ができます。「でぃぐにてぃがあるから、何があっても大丈夫」というバリューを持つ組織を作りたいです。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

失敗を恐れないでチャレンジしてください。失敗に寛容でない社会にも問題がありますね。でも恐れることはありません。経験のないことにチャレンジするんです。失敗するものだと設定すれば大きく傷つくことはない。むしろ失敗こそが経験値になる。私にも眠れない食べられない日々がありましたが、今は苦しみ抜いた末に顔つきも変わって深見のある面白い人間になれると思うと逆境も楽しみに思えます。よく眠りよく食べて、失敗を恐れずチャレンジしてください。

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