「気になる!?オウンドメディア活用と効果の本当のところ。」イベントレポート(前編)

コンテンツマーケティングの勃興や検索エンジンのサイト評価基準の変化などにより、事業者が自ら所有するメディアである「オウンドメディア」が注目されています。オウンドメデイアを持ち、広告やソーシャルネットワークサービスと併用することで、ユーザーや顧客との関係性を強化する手法が増加しています。しかし、質の高いコンテンツを継続的に作成し実際の集客に繋げることは、そう簡単にできることではありません。

そこで高田馬場創業支援センターでは、2016年11月26日に高田馬場で不動産仲介・管理業を営みながらオウンドメディアの「暮らしっく不動産」を運営する株式会社ラインズマンの代表取締役 門伝 義文氏をお招きし、創業の動機やオウンドメディアをはじめたきっかけやその運営のノウハウなどを伺う座談会を開催いたしました。今回は座談会の前半の模様をお届けします。
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ゲスト・聞き手について

ゲスト:株式会社ラインズマン 代表取締役 門伝義文氏

宅地建物取引主任士、ファイナンシャルプランナー2級
「不動産をわかりやすく伝える」をコンセプトに、不動産会社「ラインズマン」を設立。メディア「暮らしっく不動産」を運営するほか、相談者とともに悩み、考える住まい選びの “プロ”として活動している。
趣味はサッカーと音楽(ベーシスト)。ベースの教則本も執筆している。

聞き手:新宿区立高田馬場創業支援センター 施設長 田中健一朗

人間工学専攻の大学を卒業後、美術大学勤務中に中小企業診断士を取得。基礎自治体職員として商店街イベントの立ち上げに従事。その後上京し、中小企業診断士事務所にて研修講師や官公庁の調査業務を行いつつ、たいやき店舗を立ち上げる。
2011年より高田馬場創業支援センターに所属、2015年より施設長。

セミナーの様子
(右側がゲストの門伝氏、左側が施設長の田中)

田中:本日は、高田馬場で不動産業を営んでいらっしゃる、株式会社ラインズマンの代表取締役門伝義文さんにお越しいただいています。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

門伝:レコーディングなど仕事としてのミュージシャンを10年ほどやっていました。退職後、勉強して、2010年に不動産の宅地建物取引士を取得し、有楽町にある銀座不動産に入社しました。1年間不動産業を学んだあと、高田馬場に株式会社ラインズマンを設立し活動しています。

◆衝撃の事実。日本の不動産透明度ランキングは、南アフリカよりも下だった?

田中:不動産業を立ち上げたのはどういった理由からでしょうか?

門伝:数人の知り合いから、「信頼できる不動産屋がいないよね」と聞いたのがきっかけです。不動産というと悪いイメージを持つ方が多いかと思います。実際に不動産業に入ってみると、思った以上に悪いことも結構行われていました。家賃相場やオフィスデータの流通などを数値化した世界の不動産ランキングで「グローバル不動産透明度調査」というものがありますが、2014年の調査では日本(25位)は南アフリカ(21位)よりも下だったんです(2016年のデータでは、日本19位、南アフリカ25位)。

田中:先進国の中ではかなりランキングが低そうですね。また、確かに不動産屋さんに未知なる部分を感じている方は多い気がします。

門伝:そうなんです。不動産屋を不審に思っている方に向けて、不動産についてもっとわかりやすく知ってもらおうと思い、会社を設立しました。

田中:なるほど。設立後の集客は、どうされましたか?

門伝:まず、うちの事務所は高田馬場の中でも立地がすごく悪い場所にあります。マスメディアの広告が打てるほどの資本力もありませんでした。そこでインターネットを使おうと考え、オウンドメディアに取り組むことに決めました。オウンドメディアは、簡単に言うとブログやWebページのことです。これだと一般的な広告に比べて費用はほとんどかかりません。

田中:できるだけ費用をかけないという点では、創業時にぴったりですね。門伝さんはオウンドメディアを集客手段として選択されていますが、他のインターネットの広告については考えませんでしたか?例えば、検索画面の上に出てくるキーワード広告のような。

門伝:結局、選択しませんでしたね。

田中:どうしてなんでしょう?

門伝:例えばうちだと、「高田馬場 不動産」と検索して一番上に出るためには、1クリックにつき348円グーグルに支払う必要があります。1日10クリックされたら3480円、1か月だとその30倍の広告費がかかる計算になります。しかし、100クリックされたからといって、すべて集客に結び付くわけではありません。

田中:あくまでクリックされただけ、なんですね。

門伝:そうなんです。そこにお金を消費していくのはもったいないと思い、オウンドメディアを選択しました。何よりも広告費の削減ですね。そうすると効率よく仕事ができて、幸せな人生につながると考えました。

◆どんなサービス・商品でも知ってもらうことが大切!!「認知率」を上げよう

田中:仮に広告を出すとしたら、どういう点を意識されますか?

門伝:広告は売り上げをつくるために出しますよね。『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』から引用しますが、売り上げの基本要素は認知率、配架率、過去購入率、1年間に購入する率、年間購入回数、平均購入回数に主に分けられます。このうちの認知率は売る側がコントロールできるんです。

田中:認知率とは、商品やサービスがどれだけ知られているか、ということですよね。

門伝:そうです。例えばビールを買いたい!と思った人のうち、あるビールを思い浮かべる人がどれだけいるかというものです。創業したてのはじめの広告では、まず認知率を上げることに力をいれることをお勧めします。

田中:まずは知ってもらうことが大切なんですね。認知してもらう層については、どの層を意識していますか?

門伝:マーケティングの基本的な考え方では、「すぐのお客様」、ちょっと先に買おうという「そのうちのお客様」、「かなり先のお客様」が市場の構造だと言われています。「すぐのお客様」にアプローチしようとすると、大手と競合することになります。そうすると広告費はどうしても高くなってしまいます。そこでオウンドメディアでは「そのうちのお客様」と「かなり先のお客様」にアプローチを絞りました。時間が経過すればその層がお客様になってくれるんじゃないかなと。

田中:なるほど。ちなみに、不動産業だとお客さんは借りたい人とリフォームや管理を希望する大家さんと2つのお客さんがいると思いますが、どちらをターゲットとして意識していますか?

門伝:借りたい人ですね。市場のニーズを考えたとき、大家さんの数は少ないですから、そこにターゲットをしぼると時間がかかってしまいます。なるべく人数が多いところを狙った方が良いと思い、最初から部屋を探している人にターゲットを絞りました。

◆オウンドメディアをつくる上で知っておきたい根気と根性の話

田中:門伝さんの運営されている暮らしっく不動産のホームページはかなり立派ですよね。記事数はどのくらいありますか?

門伝:ありがとうございます(笑) 記事は現在903ページですね。

田中:903ページですか!?

門伝:コツコツと続けていった結果ですね(笑) これは噂ですが、グーグルの検索結果で1ページ目に表示されるためには、コンテンツ数、つまりページ数が640、1つのコンテンツの文字数は1800というのが1つの指標といわれています。僕たちはこの指標を信じて、ここまでやってきました。すべてのページが1800字あるわけではありませんが、903ページもあると、「不動産 高田馬場」と調べたとき、1ページ目に表示されるようになります。

暮らしっく不動産ホームページ
田中:なるほど。そうはいっても640ページってなかなか大変ですよね。5ページくらいで諦めちゃう方も多い気が(笑)

門伝:正直最初は気が滅入りましたね(笑) でも300くらいやると少しずつ結果が出てくるんです。それが大体1年くらいかかります。

田中:モチベーションはどのように維持されていましたか?

門伝:小さい目標を設定するように心がけました。1記事1~3時間ほどかかると思いますが、時間で計算していると1,2年はかかります。もちろん最終目標の設定は絶対ですが、例えば10記事終わったら打ち上げしようなど、小さめの目標をたくさん設定します。

田中:小さい目標を積み重ねていった結果、大きな目標を達成するという流れですね。

門伝:そうですそうです。あとは、広告費がすごく削減できることは非常に大きいですね。この記事が集客につながっている!という意識は大きなモチベーションにつながりますし、そこの意識を自分の会社の中でいかに高められるかということが重要だと思います。

◆引用ははっきり明記する、自分で調べた一次情報を大切に

田中:記事を書く上で、特にどういったことを意識していますか?

門伝:気を付ける事は、まず引用です。データ等を引用する際、どこからもってきたものかきっちりと表記するようにしています。

田中:引用は本当に気を付けていただきたいですよね。自分のサイトよりもPVが少ないマニアックなサイトから写真をパクってきて…といったこともよくあるそうですが、そういうので炎上しちゃう事例もあります。1回炎上するとメディアとしての信用もなくなってしまいますし。

門伝:きちんとすることは、長くやっていく上で大切ですね。あとはいつ、だれが書いたものなのか、書いた人の顔を出してはっきりさせています。所謂キュレーションメディアだと誰が書いているかはっきりしていませんよね。どこかしらない主婦がうわさ話をかいている記事だと信頼がありません。

田中:顔出しは嫌がる方がけっこう多いかと思いますが、Webでやっていくなら出さざるを得ないと思いますね。

門伝:そうですね。身分を明かして、顔を出して書くことは信頼を得る上で大切だと考えています。もう1つ大事なことは、一次情報であることです。どこからか聞いた話をまとめた記事というのはあまり価値がないんですね。書いた記事の内容について、自分が1番はじめだと、すごく共感されてPVが増えたりします。

田中:一次情報ですか。例えばどういった記事を書かれましたか?

門伝:うちの場合だと、「おとり物件をおとり調査してみました」という記事がバズりました。これは不動産賃貸の客付け業者の悪行を暴いた記事です。

田中:ちなみにどれくらいの閲覧数でしたか?

門伝:その時のPVは1日10万ほどでした。この記事は1次情報を中心に書いた記事で、人気も出ますし価値もあります。これをやってよかったことはテレビや新聞の取材が来たことです。

田中:マスコミからの取材ですか!オウンドメディアならではのメリットですね。

門伝:そうですね。マスメディアに取り上げられることは、思った以上の効果です。最初オウンドメディアを立ち上げた目的は、問い合わせを増やすことでした。こちらも順調に増えていますが、テレビなどが取材に来ることも多くなりました。彼らはインターネットからネタを探していることも多いそうです。取り上げられることによって認知されていなかった顧客層からも反響が出ます。

田中:最近は、未だにテレビをよく見る人と、ネットをよく見る人と二極化が進んでいそうですし、なかなか両方にリーチするのって難しいですよね。

門伝:難しいですね。ただ、こういった思わぬ効果は、テレビCMと同じくらいの効果だと感じています。オウンドメディアだけでは取り込めない、幅広い層にアピールできます。

田中:知ってもらう裾野が広がりますね。自分でテレビに売り込むなんて、普通は不可能ですからね(笑) Web上である程度バズっていたり、キーワードで検索されていたり、Web上に私はいますよ、という痕跡は大事ですよね。

門伝:痕跡の話でいうと、やはりSNSは一番拡散されるんですね。「すぐのお客様」はSNSにはそんな反応しませんが、「そのうちのお客様」「かなり先のお客様」や「お客様でない人」はこのサイトが役に立つと認識するとSNSで拡散してくれます。これはすごく大事にした方が良いです。

田中:なるほど。具体的にはどういったことをされていますか?

門伝:今流行っている主要なツールを拡散ボタンとして配置しています。これはスマホだとWeb上にボタンがなくてもOS機能としてついている場合もあります。

田中:うちもはてなブックマーク、Facebook、Twitterをつけています。簡単に付けられるんですよね。

門伝:そうそう。拡散は結構大事です。あとうちはまだつけていませんが、最近だとLINEも増えていますね。

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テキスト:小松奈央、編集・文責:田中健一朗