利用者インタビュー:トークンエクスプレス株式会社 代表取締役 紺野貴嗣氏


利用者インタビュー:トークンエクスプレス株式会社 代表取締役 紺野貴嗣氏

新しい技術だからこそ無限の可能性があるものの、日本での知名度はまだ低い「ブロックチェーン」。
まずはそのシステムを知ってもらい、サービスとして提供出来るのか、出来るのであればどのような方法があるのか、お客さんと一緒に考えながら作っていきたいと語る紺野さん。

今回のインタビューでは、「ブロックチェーン」という新しいシステムの可能性を見いだし、新たなビジネスチャンスに挑戦している当センター利用者の紺野さんに、創業のきっかけや思いなどを伺いました。

トークンエクスプレス株式会社 代表取締役 紺野 貴嗣氏

~プロフィール~

東京工業大学卒業後、2009年に独立行政法人国際協力機構(JICA)に入構。イラク、ヨルダンをはじめとする中東向け国々への政府間融資業務に従事。
2011年から2013年まで経済産業省 貿易経済協力局に出向。2013年から2016年までJICAエジプト事務所に駐在。現地のマイクロファイナンス産業の発展、特にマイクロ保険の適法化、業界団体設立に尽力、達成。2017年から2019年までアメリス株式会社にて大企業~中堅企業向け業務改革サービスを提供。
2019年9月にトークンエクスプレス株式会社を創業。

2016年、スペインのIE Business SchoolにてMBA修了。2014年、米国のBoulder Institute of MicrofinanceにてMicroFinance Managementコース修了。

トークンエクスプレス株式会社HP:https://token-express.com/

現在の事業内容について教えてください。

「ブロックチェーン」という仮想通貨の基にもなっている技術の利用も含めて、法人向けの課題解決コンサルティングをしています。海外を含めた展開や持続可能な社会作り(SDGs)を考えている企業様に対して、ブロックチェーンを用いることがいいのか、それとも他の技術を使うべきなのかを含め、企画から運用までを行います。

ブロックチェーンの使い方としてすぐに思い浮かぶものは仮想通貨ではないでしょうか。仮想通貨に限らず、ブロックチェーンは特に国境を越える価値のやりとりなどに有利という特徴がありますので、越境商圏の構築についてご提案したりすることがあります。これまで仮想通貨やトークンのやりとりをしたことがない方にもそれが行いやすくなるようなアプリケーションのプロトタイプを作って一般に公開しています。このアプリはIT系の企業と組んで、私がディレクションして作成しています。

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

元々はJICAという組織に所属し、国際協力として特に中東の国々向けの支援を行っていました。その中でエジプトにおけるマイクロファイナンスの保険分野に携わり、保険サービスの普及及び制度作りを3年ほど行っていました。一方でブロックチェーン技術と出会い、額の多寡にかかわらず価値の交換が可能なことを知り、将来必ずこの技術がマイクロファイナンス分野を大きく変えてしまうだろうという考えに至りました。更に大きなくくりである「国際協力」「国際開発」という分野においても、ブロックチェーンという技術が物事の根底を変えてしまう可能性があると感じ、この分野に関わっていたいと思い事業を立ち上げました。

創業する際に大変だったことは何ですか?

現時点でも思っていることですが、既にマーケットがある他の分野では新しいやり方でも少なからずニーズは必ずあるし、お客様もどういうものなのかイメージがしやすいと思います。対してブロックチェーンはまずその言葉の説明から始まるところがあり、そもそもニーズを認識しているお客様が少ないというところがとても難しいです。

ブロックチェーンをご存知ない方が多いので、まずは情報発信をちゃんとしていかないといけないなと思い、今は弊社のブログを毎日更新しています。

ブロックチェーンとはいってしまえばただのデータベースなんです。その仕組み、保存方法が独特だから、今までとは違うアプリケーションが作れるというだけなんですが、「仮想通貨」という使用例が大々的に出たことで皆さんそちらにばかり目がいってしまっている。でもそれだけじゃないということをコンサルティングを通して知ってもらい、いいソリューションに結びつけるというのが私の仕事と考えています。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

IT関係の産業に関わる企業の数が「区」という単位で考えた場合、新宿区はかなりの上位にきていました。全くないエリアと一定数あるエリアでは信用力に違いがあると思います。また、かなりの頻度でお客様のところへ行くので、アクセスが良く「お客様と近い」というところも魅力でした。

今後の事業展開、ビジョンについて

目標は2つあります。1つは、ブロックチェーン利用の実例を世の中に生み出していくということです。
既存の仕組みが整っていない発展途上の国ではブロックチェーンのような新しい仕組みは一気に組み込まれる時があるのですが、日本には既に確立されて運用されている仕組みが多い為、成り代わるのは中々難しい。けれどそういった既存の仕組みにはない可能性や力がブロックチェーンにはあるので、それを示すサービスを作っていきたいです。
私は現在コンサルティングを行っていますが、「お客さんと一緒に作る」という形を常に考えているので、共同事業のような形でブロックチェーンの可能性を提示出来るようなサービスを沢山作っていけたらいいなと思っています。

2つめは、「ブロックチェーン事業を成功させるにはどうしたらいいか」という私の中にあるメソッドを文字化して見える化をして、誰もが使える形にしていくということです。
提供するコンサルティングも都度オリジナルなのではなく、1つの定説のような形を作りあげたい。その証明として、まずは自分自身の事業を成功させなければと奮闘中です。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

自分自身の反省でもありますが、やはり創業時に顧客候補を確保していることは大事です。今までの仕事の延長線上でのお客様でももちろんいいと思いますが、まずは自分のビジネスプランに対して「それならお金を出して試してあげるよ」と言ってくれるお客様を一人でもいいので見つけてから創業するのがいいと思います。
私は以前からアイデアは周囲に話しており、皆「いいね」とは言ってくれるのですが、「買うよ」となる前に起業をしました。結果的には人の縁で何とか顧客を獲得出来ましたが、このご縁がなければどうなっていたのか…と今では思います。

また、事業内容がはっきりと見えている場合はその分野に強い人と組んで起業することもいいと思いますが、私のように新しい事業をやろうという時に、まだ形が見えていない中で誰かと一緒にやるというのはお互いが責任を持てないなと思っています。そういった場合は一人で始めて、ある程度形が見えてきて必要な人材が分かったときに入ってもらうというのが理想ですし、私はそれを目指して現在模索中です。