利用者インタビュー:株式会社ユニバーサルトレーニングセンター 代表取締役 菅原瑞貴氏

利用者インタビュー:株式会社ユニバーサルトレーニングセンター 代表取締役 菅原瑞貴氏

「実際に体験をすることはトレーナーとして重要」と車椅子で高田馬場創業支援センターに来館されることもある菅原さん。事故や病気で麻痺となり、車椅子生活を送る障がい者の視点に立ってパーソナルトレーニングを行っています。

今回のインタビューでは、「頑張る人のサポートをしたい」「一人でも多くの障がい者の【出来る】を増やしたい」と日本ではまだまだ数の少ない、障がい者専門のトレーニングセンターを設立された当センター利用者の菅原さんに、創業のきっかけや思いなどを伺いました。

株式会社ユニバーサルトレーニングセンター
代表取締役 菅原 瑞貴氏

~プロフィール~

2012 年 : ネバダ州立大学ラスベガス校卒業
米国 NATA 公認アスレチックトレーナー資格 (ATC) 取得・米国プロサッカーチーム スポルティングカンザスシティー
2013~2017 年 : 脊髄損傷者に対してトレーニング指導
2016 年 : リオデジャネイロパラリンピック 日本選手団 HPSCトレーニング部門
2017 年 : 個人事業としてUniversalTrainingCenter (ユニバーサルトレーニングセンター) 設立
2019 年 : 株式会社ユニバーサルトレーニングセンター設立

ユニバーサルトレーニングセンターHP:https://universal-training-center.com/

現在の事業内容について教えてください。

障がい者専門のトレーニングを行っています。脊髄損傷や脳性麻痺など様々な病気やケガで運動麻痺を負った方や車椅子生活になった方に対して、障がいの度合いや、「日常生活動作が出来るようになりたい」「パラスポーツ選手として強化したい」といったそれぞれの目標に合わせて一人一人にメニューを組み、ご自宅や希望の場所に伺ってトレーニングを行っています。

運動麻痺や車椅子生活になると、基本的に病院では「あなたはここから先良くなりません」と断定されてしまいます。しかし、身体を正しく動かし続ければ、少しずつですが改善してくるのです。その「良くなるのびしろ」を知らない人達に、「出来ない」と言われた事ができるようになる成功体験を通して彼らの人生のサポートをしたいと思っています。

創業しようと決めたきっかけは何ですか?

元々サッカーが好きだったこともあり、選手をサポートする仕事に就きたくてアメリカに留学し、その時にトップレベルのプロサッカーチームでトレーナーを経験しました。そして日本に戻ってきてトレーナーとして仕事を探した際、障がい者のトレーニングをする施設に偶然出会いました。

それまでは世の中で一番頑張っているのはプロアスリートだと思っていたのですが、障がい者の方はそれ以上に頑張っていること知り、自分は「プロアスリート」ではなく、「頑張っている人」をサポートしたいんだと気づき、その職場で働くことにしました。

日本では障がい者向けのトレーニングを行う施設はまだまだ少ないです。しかし前職の施設では自分の思ったことやアクションが起こせず、自分が思っている「障がい者に対するいいこと」が出来ず歯がゆく感じたため、独立を決意しました。

創業する際に大変だったことは何ですか?

先の見通しが2~3ヶ月くらい先までしかイメージ出来ない不安感の中で進めていくことが一番精神的にきつかったです。今は高田馬場創業支援センターを利用しつつ訪問型でコストを抑えてハード面の費用的な問題をクリアしているので、ある程度は安定してきました。しかし基本的に新規顧客の獲得が課題となっているので、もう少し顧客獲得を頑張りたいと思っています。

一方技術的なところでは、Webサイトや会計など、今まで会社がやってくれていたことを全て自分でやらなくてはいけなくなったことが大変ではあります。ただ、模索しながらではありますが今まで知らなかった分野の勉強になっているとも感じているので、やはり一番大変なのは不安感との戦いです。

新宿区を事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

元々新宿区に住んでおり、登記をする際に特定創業支援等事業という制度を知り、その流れで高田馬場創業支援センターを知りました。コスト面ももちろんありますが、自分の業界はすごくニッチなので、シェアオフィスを借りるのであれば色々な人と交流が出来る所がいいなという思いもあり、センターの利用を決めました。また、公共交通機関を移動に使う訪問型という事業形態のため、アクセスはとても重要でした。

事業をやるからにはやはり大きくしていきたい、全国に広げていきたいという思いがあります。そう考えると日本の中心でもあるここからスタートしていきたいと思いました。

今後の事業展開、ビジョンについて

利用者インタビュー:株式会社ユニバーサルトレーニングセンター 代表取締役 菅原瑞貴氏

リュック一つで指定の場所に伺ってトレーニングを行えるのが訪問型のいいところですが、お客さんの中にはやはり自宅以外の専門の施設を希望する方もいます。障がい者がトレーニングの出来る施設というのはまだ限られていて、体育館などには車椅子の使用がNGというところも沢山あります。ただし、それは靴が車輪になっただけで、汚れたのであればキレイにすることだって出来るという、健常者と変わりがないことを知らないだけなので、知ってもらって、トレーニングを出来る環境を増やしていきたいなと思っています。

もちろん、自分の施設もいずれは構えたいと考えています。実際に車椅子で街中や公共交通機関を使った移動を体験して、日々のトレーニングの参考にしたり、施設を構えるのに必要な環境を考えたりしています。

また、トレーニングに使う器具に関して、今は既存の物を持参したり、お客さんに用意をしてもらったりしていますが、使いやすい器具というのは中々ありません。なので、障がい者向けのトレーニング器具の開発なども連携してやっていけたらいいなという夢はあります。

創業を目指している方にメッセージをお願いします

自分がやりたくて、社会のためにもなって、新規性がないと事業を立ち上げる意味がないと僕は思っています。

僕の事業は新しい分野なので新規性があるけれど、一方で世の中にある多くのサービスには競合が沢山いて、他の会社に入れば出来ることが結構あります。そんな「新規」を見つけるのが大変な中で、敢えて独立して事業を行うんだっていう、「他のサービスでいいじゃん」と言われても突き通せる信念は必要です。

とはいえ、その「芯」を軸にして柔軟な考え方をしていくことも重要です。先が見えない不安感は確かにあります。でも世間全般をみても終身雇用はなくなってきているし、どの会社が10年先に生き残っているのか全然わからなくなってきている。そんな中では自分の能力を開発しないことの方がリスクだと思うので、新しいことも積極的に取り入れて見えない道を突き進んでいってほしいです。

そして仲間がいるということも大事です。仲間は「見えない道を進む不安」をサポートしてくれます。2人、3人で考えていれば、自分の主観的な意見だけじゃなく、別の視点が見えてくる。同じような意見でも、また違った意見であっても、「自分が信頼してる人達がこういう風に考えるんだからあながち間違いじゃないだろう」という確信に繋がると思うので、不安を緩和してくれるという意味で仲間は必要だと思います。ただやはり、一番上の人が責任は持たなければならないので、どうしたって不安感は残ります。

だからこそ楽しむことは大事。それに先が見えない、わからないというのは、自分の「のびしろ」があるということなのではないかと。だから不安だけれど、楽しみでもあります。この「楽しむ」ということは、事業を進めていく上で忘れないようにしたいですね。